冬眠中はお静かに

『冬眠中はお静かに』（原題：Rock-a-Bye Bear）は、1952年公開のアメリカ製アニメーション短編映画です。名匠テックス・アヴェリー監督が手掛け、MGMよりリリースされました。

物語の中心は、ブルドッグのスパイク。彼は「野良犬の家」に収容されているのですが、ある日、山奥に住むクマの家で冬眠中の留守番をする仕事に派遣されることになります。クマは冬眠中、少しでも音がするとすぐに怒り出す神経質な性格。そのため、スパイクは静かに留守番をしなければなりません。

ところが、スパイクの前に、同じく派遣された意地悪なビーグル犬が現れます。このビーグル犬は、スパイクを陥れようと、様々な悪巧みを企てます。ビーグルは、スパイクが少しでも音を立てると、クマを起こさないようにとスパイクをいたずらで追い詰めます。

例えば、ビーグルは戸棚からグラスを次々と投げ落とし、スパイクはそれを必死に受け止めようとします。ビーグルのいたずら攻勢は止まりません。コショウのビンがスパイクの鼻に直撃し、くしゃみが出そうになる場面も。スパイクは、家から離れた場所で大きなくしゃみをし、グラスを遠くへ飛ばします。さらに、ビーグルはスパイクの首をテーブルに挟み込み、口にダイナマイトを放り込むなど、スパイクはビーグルのいたずらに翻弄されっぱなしです。

スパイクは、ビーグルのいたずらに対抗しようとしますが、クマを起こさないように気を使いながらの対応は、容易ではありません。終盤では、ビーグルがクマの家の周囲に大量の爆薬を仕掛け、爆発させるという大胆な行動に出ます。しかし、クマは爆音にもかかわらず、眠り続けています。

そして、物語は意外な方向へ転がります。スパイクが以前、外へ飛ばした写真の紙飛行機が、風に乗って戻ってきます。その紙飛行機を見たビーグルが、思わず口笛を吹いてしまったのです。その音でクマが目覚め、ビーグルはクマに追いかけ回される羽目になるというオチです。

本作は、スパイクのドタバタ劇と、ビーグルの悪巧み、そして予想外の結末が見どころです。スパイクは、この作品以外にも様々な作品に登場しており、本作はそのシリーズの一部とも捉えられます。また、静寂を守ろうとする努力が裏目に出てしまうという、コミカルな展開は、他のアニメーション作品にも影響を与えていると言えるでしょう。

登場キャラクターは、短気なクマ、意地悪でずる賢いビーグル犬、そして騒動の中心となるスパイクなど個性豊かです。「野良犬の家」の職員も、高圧的な態度で犬たちを怒鳴りつける一方、客には丁寧な対応をするという、人間味あふれるキャラクターとして描かれています。

『冬眠中はお静かに』は、テンポの良い展開と、予測不能なストーリー、そして個性的なキャラクターたちが織りなす、笑いと驚きが詰まった傑作アニメーション短編と言えるでしょう。日本のテレビ放送では、TBS版『トムとジェリー』の合間に放映され、多くの人々に愛されてきました。

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