冬芽の人

冬芽の人

『冬芽の人』は、大沢在昌による日本の小説で、元警視庁捜査一課刑事の牧しずりが過去の事件の真相に迫る物語です。

あらすじ

主人公の牧しずりは、かつての上司であった前田光介の墓参りで、彼の息子である仲本岬人と再会します。6年前、しずりは強盗殺人事件の容疑者である村内への聞き込み中に村内に襲われ、それを庇った前田が重傷を負い昏睡状態に陥るという事件がありました。村内はその後逃走中に交通事故で死亡し、しずりはその事件に強い罪悪感を抱き、警察を退職していました。

岬人の同僚である君津が、過去に起こした交通事故について吹聴していることから、君津が村内を轢いたのは、実は請け負い殺人だったのではないかという疑惑が浮上します。過去の事件に後悔の念を抱くしずりに対し、岬人は彼女を励まします。しかしその後、喫茶店でしずりと会った君津は、恐怖の表情を浮かべて逃走し、後日、山中で死亡しているのが発見されます。

君津の不審な態度と突然の死を不審に思ったしずりは、岬人と共に6年前の事件を再調査することにします。捜査を進めるうちに、村内に容疑がかけられていた強盗殺人事件の被害者、奥平正に身寄りがなかったことから、村内を使って奥平を殺害させたのも請け負い殺人だったのではないかという推理に至ります。さらに、君津が事件について刑事に調べられていると考えた何者かによって、口封じのために殺されたのではないかと考えます。そして、事件の関係者と前田が同じ地方の出身であるという事実が判明し、前田の隠された一面が明らかになっていきます。

登場人物

牧 しずり（まき しずり）
元警視庁捜査一課の刑事。現在は事務機器メーカーのOLとして働いています。過去の事件から約1年後に警察を辞職し、その後軽いパニック障害を経験しました。静かな生活を望んでいます。
前田 光介（まえだ こうすけ）
警視庁捜査一課の刑事で、しずりの元上司であり相棒でした。しずりとは生活安全部でも同僚でした。強盗殺人事件の捜査中に階段から転落し、約2年間の昏睡状態の末に死亡しました。実は女癖が悪く、しずりにも好意を抱いていました。表向きは東京出身と語っていましたが、実際の本籍は福島県南会津郡高畑田村でした。
仲本 岬人（なかもと さきと）
前田の息子で、大学生。配送会社でアルバイトをしています。しずりが過去の重荷から解放され、再び前向きに生きていくことを願っています。
君津 政一（きみつ せいいち）
村内を轢いたトラックの運転手。岬人と同じ配送会社に勤務しており、「合法的に人を殺せる」と豪語していました。後に遺体で発見されます。
中崎（なかさき）
しずりの上司で、営業二課長。仕事熱心で有能なしずりを高く評価しています。
浅野 香織（あさの かおり）
しずりの同僚で、人付き合いの悪いしずりを嫌っています。
三石（みついし）
警視庁捜査一課の管理官で、しずりの元上司。当時は第四強行班第七係長でした。
西原 栄一（にしはら えいいち）
『週刊文化』の記者を名乗り、奥平事件の際に周辺を取材していました。
植田 敦美（うえだ あつみ）
しずりの刑事時代の同僚。射撃の腕前はしずりと並び、五輪を目指していました。
村内 康男（むらうち やすお）
奥平正強盗殺人事件の容疑者。窃盗の前科がありました。前田ともみ合いになり階段から転落した後、逃走中にトラックにはねられて死亡しました。
奥平 正（おくひら ただし）
6年前に殺害された老人。かつて鋳物工場やタクシー運転手として働いていました。南会津郡高畑田村出身。
前田 えり（まえだ えり）
光介の妻。夫の女癖に悩んでおり、しずりとも愛人関係があったと信じています。夫の死後、沖縄に移住しました。
藤原 麻子（ふじわら あさこ）
しずりの同僚。
関口 照美（せきぐち てるみ）
しずりの同僚。
坂本 朋代（さかもと ともよ）
しずりの同僚。
高井 梅子（たかい うめこ）
奥平正の家政婦で、事件の第一発見者。
前畑 庸三（まえはた ようぞう）
奥平正と会社を起業しましたが、プラハ滞在中に急死しました。南会津郡高畑田村出身。
奥畑 圭介（おくはた けいすけ）
半導体メーカー社長。南会津郡高畑田村出身。
* 奥畑 洋介（おくはた ようすけ）
奥畑圭介の兄。南会津郡高畑田村出身。

テレビドラマ

2017年には、テレビ東京でテレビドラマ化されました。鈴木京香が主演を務めました。

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