冷たい肉そば

冷たい肉そばについて

冷たい肉そば（つめたいにくそば）は、山形県河北町で生まれた独特な郷土料理です。この料理は蕎麦ではなく、中華麺を使用して作られ、地元では「つったい肉そば」とも呼ばれています。冷たい肉そばは、冷やしラーメンのように氷をつゆに入れるのではなく、常温で供されるという点が特徴的です。河北町の飲食店では、2018年8月時点で、13店がこの料理を提供していました。

具材とつゆの特徴

この料理の主な具材としては、歯ごたえのある親鶏とネギが使われています。つゆは、鶏骨をベースにした出汁が冷たくなるように仕上げてあり、使用される鶏肉は堅めのものであることが好まれています。若鳥ではなく、育ち切った鶏肉が使用されます。

誕生の背景

冷たい肉そばの起源については、いくつかの説が存在します。一つには、育ち切った鶏を有効活用するために誕生したという説があります。また、賄い料理として鶏そばが冷たくても美味しいと評判だったため、提供する形に至ったとも言われています。さらに、大正時代には酒場としてのそば店が多く、馬肉の煮込みを楽しんだ客が残った馬肉をそばに入れたことでこの食べ方が広まったというエピソードもあります。戦後には、鶏肉が手に入りやすくなったため、より多くの店で提供されるようになりました。

料理提供の工夫

冷たい肉そばは、温かい汁だと具材の肉を食べる過程でそばが伸びてしまうため、つゆを常温で提供するようになったという点も重要です。また、客をもてなす際に出前でそばを取る習慣があり、そばの食感を保つために冷たくされたつゆが好まれました。

近年の人気と観光

河北町のNPO「かほく冷たい肉そば研究会」は、2011年に全国的な関心を呼び起こすために第6回B-1グランプリに出展しました。その結果、多くの観光客が河北町に冷たい肉そばを味わいに訪れるようになりました。特にサクランボ狩りの観光客と相まって、毎年6月から7月にかけて訪れる人が増加します。2018年には、PR大使の最上川司が歌うテーマソング『司の冷たい肉そば音頭』がリリースされ、常温保存できる土産用の肉そばも研究会によって開発されました。商品パッケージには、最上川司本人が描いたイラストが使用されています。

仙台市との競争

また、隣接する仙台市では2010年代から冷たい肉そばを提供する店が増えており、河北町を越える店舗数を誇る地域となっています。伝統的な冷たい肉そばのスタイルのみならず、独自のアレンジを加えたメニューが人気を集めています。

冷たい肉そばは、山形県河北町の誇るべき名物料理であり、地域の文化や歴史と深く結びついています。そのユニークなスタイルは、全国の食文化に新しい風を吹き込み、多くの人々に親しまれています。

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