凧の実験

フランクリンの凧の実験

1752年6月、イギリス領アメリカのフィラデルフィアでベンジャミン・フランクリンが行った凧の実験は、雷と電気の関係を探る画期的な試みでした。この実験は、当時の科学界での雷の電気的性質に対する議論を背景に展開されました。

背景と前史

18世紀中頃、ジャン＝アントワーヌ・ノレの考察により、雷が持つ電気的性質に関する議論が高まっていました。この頃、フランスのボルドーで出された懸賞問題や、ドニ・バルブレによる論文発表が影響を及ぼしました。バルブレは摩擦帯電に基づく雷の性質を主張し、雷が高所に引き寄せられるというフランクリンの考え方を再評価するよう促しました。この時期、フランクリンは自身の見解を示し、雷と電気の関連性について大胆な実験を計画したのです。

実験の実施

フランクリンは、導電性のある棒を利用して雷をライデン瓶に引き込む方法を考案しました。実際の凧の実験に向けて、彼は濡れた麻糸を使用するアイデアを思いつきました。これは、凧を揚げることで静電気を集め、湿った凧糸を使うことでデータを取得する手法です。実験はフィラデルフィアのクライストチャーチの尖塔で行われたと言われていますが、実際には当時この尖塔は増築されていなかったため、正確な場所はいまだに議論の対象です。

実験の日、フランクリンは息子を手伝わせ、凧を高く揚げました。凧の糸は雨に濡れており、これが導電体として機能しました。フランクリンは、凧を揚げる際、地上の小屋から行ったため、彼自身の位置にある麻糸は乾燥したままで、絶縁体となりました。

実験結果と発表

フランクリンは実験中、凧糸の帯電した繊維が相互に反発し合っているのを観察し、ライデン瓶も帯電していると推測しました。その後、彼は凧の糸と鍵を利用し、電気火花を発生させ、雷が電気であることを実証しました。実験の成果は、1745年に創刊された雑誌『哲学紀要』に掲載され、1752年12月21日に正式に発表されました。

証明された雷の電気的性質

一般的に「凧に雷が落ちた」という逸話が広まっていますが、実際には凧そのものに雷が落ちたわけではありません。もしそうであれば、フランクリン自身が命を失っていた可能性が高いのです。彼の実験は、雷の電気的性質を確認し、他の科学者の研究と相まって、雷と電気が同一の現象であることを証明した歴史に残る瞬間でした。

この実験は、フランクリンの科学者としての名声を決定づけるものであり、雷に関する理解を深めただけでなく、電気の研究における重要な一歩となりました。

もう一度検索