出し平ダム

出し平ダムの概要と特徴

出し平ダム（だしだいらダム）は、富山県黒部市にある黒部川の本流に建設された、関西電力が運営する重力式コンクリートダムです。一般の人々は直接立ち入ることができませんが、黒部峡谷鉄道のトロッコ電車からその姿を望むことができます。ただし、冬季の積雪期間中は、黒部峡谷鉄道が運行しないため、上流に位置するダム群で勤務する関電の職員たちが「逓送さん」と呼ばれ、徒歩で新鮮な野菜などを届ける役割を担っています。特に「出し平往復」のコースは、日々の移動の中で最も長い距離を歩くことになります。

歴史

出し平ダムは、1985年6月4日に湛水が始まり、同年7月には完成を迎えました。これは関電が手掛けた黒部川水系のダムの中では最新のもので、認可された発電出力は新柳河原発電所が41,200kW、音沢発電所が124,000kW、出し平発電所が520kWとなっています。

環境への影響と対策

出し平ダムは、日本初の排砂ゲートを備えたダムとして知られています。この排砂ゲートはダム湖に堆積する土砂を除去するために設計されており、特に黒部川は土砂排出量が多いことで有名です。ダムの貯水池の容量維持と、下流への土砂供給が目的です。6年目にあたる1991年12月に、初の排砂放流が行われました。しかし、その際には湖底に積もった有機物が腐敗してヘドロ状の土砂が発生し、下流の漁業に深刻な影響を与えてしまいました。この問題に対しては、関電と地元の漁業協同組合との間で公害訴訟が発生し、一審で関電に対する賠償が命じられ、最終的には和解が成立しました。

その後、排砂方法の見直しが進められ、「増水時に排砂を行う方が下流への影響が少ない」という観測結果が得られました。2005年の豪雨に伴い、増水時の排砂が実施され、その効果が確認されました。このような努力は、自然との共存を目指す運用改善の一環として続けられています。それでも、さらなる改善の余地があることも指摘されています。

維持流量の活用

出し平ダムでは、法令に基づいて設定された維持流量を活用し、河川環境を維持する目的で新たに出し平発電所が2015年11月30日に運転を開始しました。この発電所は、関西電力において維持流量を活かす2番目の施設であり、年間の発電量は約171万kWhと見込まれています。これにより、年間で900トンのCO2排出削減が期待されています。

まとめ

出し平ダムは、環境保全と電力供給の両立を目指して多角的な運用が行われており、地域の環境に配慮した運営が求められる現代において重要な存在となっています。

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