出ていけッ!

手塚治虫の代表作の一つに数えられる『出ていけッ!』は、時空を超えた奇妙な出来事を描いた短編漫画です。昭和47年、プレイコミック誌上に掲載されたこの作品は、読者に強烈な印象を残す、予測不能な展開と謎解きが魅力です。

物語は、下村風介という男性の自宅に、ある日突然若いカップルが侵入してきたことから始まります。しかし、風介の呼びかけにも全く反応せず、彼らを無視して部屋の中を自由に動き回るカップル。風介は彼らの正体を探ろうとしますが、ある新聞記事から、彼らが10年後の未来から来た人間であることを知ります。

最初は戸惑いを隠せない風介でしたが、カップルの女性に次第に惹かれていきます。しかし、風介は恐るべき事実を目の当たりにします。カップルの男性は女性の財産を狙っており、なんと彼女を殺害しようとしていたのです。

事態の重大さを悟った風介は、女性の身を守るため、そして二人の恐るべき計画を阻止するため行動を起こします。まず、警察に通報。そして、警察の到着を待つ間、偶然にもカップルの会話を盗み聞きする機会を得ます。そこで明らかになったのは、驚くべき女性の過去でした。彼女はなんと、過去の風介と結婚していた過去を持ち、彼を殺害して財産を手に入れていたのです。男性の狙いは、まさにその莫大な財産だったのです。

この時、風介は自身の過去の過ちと、未来を変えるための決断を迫られます。彼は、現在の女性を救うべく、自ら彼女と結婚することを決意します。これは、過去と未来、そして愛と裏切りが複雑に絡み合う、スリリングな展開の始まりでした。

『出ていけッ!』は、単なるSF作品にとどまらず、人間の業や運命といった深遠なテーマを扱っています。時空を超えた恋愛模様と、隠された過去の真実が、読者に衝撃と深い余韻を残します。

この作品は、以下の単行本に収録されています。

すっぽん物語（奇想天外文庫、1976年7月1日）
手塚治虫SF傑作集「時間旅行者編」（ちくま文庫、2002年08月07日）
* 大地の顔役バギ（手塚治虫漫画全集321巻、1993年5月17日）

手塚治虫の独特な画風と、緻密に練り上げられたストーリー展開は、多くの読者を魅了し続けています。時空を超えた愛と裏切り、そして人間の心の闇を描き出した『出ていけッ!』は、まさに手塚治虫の才能が凝縮された傑作と言えるでしょう。この作品を通して、読者は人間の複雑な感情や、予測不能な運命について深く考えさせられることでしょう。

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