出公 (衛)

出公の生涯と政治

出公（しゅつこう、紀元前?年 - 紀元前469年）は、衛国の君主として数々の苦難を乗り越えながら、政治を行った人物です。彼の本名は輒であり、衛の第30代および第33代の君主とされています。出公は29代の衛霊公の孫であり、父は蒯聵です。このように彼の家系は、衛国の歴史において重要な立場にありました。

出公は衛の太子として生まれましたが、彼の人生は早くから波乱に満ちていました。霊公42年、霊公が謀略により蒯聵を追放したため、衛の王位は混乱に陥りました。その結果、霊公の急死に伴って、太子の地位が空位となった際、郢が出公を推薦しました。これにより出公は君主となり、衛公としての地位を確立しました。

政権を握った出公は、早速対外戦争に対処することになりました。霊公の死から間もなく、出公は晋の趙鞅が蒯聵を衛国に連れ戻そうとする動きに対抗し、軍を派遣しました。これが功を奏し、蒯聵は入国を果たせず、出公は君主としての立場を守りました。

その後も出公は数度の戦争を経験しました。出公3年（前490年）、晋が衛国に攻撃を仕掛けてきましたが、出公はこれを撃退します。また、出公10年（前483年）には呉国との会合がありましたが、出公は呉の盟を結ばなかったために監禁されることとなりました。しかし、子貢の仲介によって解放され、帰国を果たしました。

出公の時代には、孔子との出会いも重要な出来事の一つです。出公の9年（前484年）、孔子が衛国に訪れ、大夫の孔圉が用兵の知恵を問いましたが、孔子は語らなかったとされています。このような背景の中で、出公は学問や戦略を重視し、次第に彼自身の政治スタンスを確立していきました。

しかし、彼の支配の下でも内紛や不和は続きました。出公11年（前482年）には晋の軍が衛に侵入。翌年にはまたしても晋からの攻撃を受けました。そして出公13年（前480年）には、蒯聵を奉迎しようとする動きが強まる中、孔氏が権力を握り、出公は窮地に立たされます。

このような紆余曲折の末、出公は客位から呼び戻されることになりますが、その統治は再び安定することはありませんでした。出公後元年（前476年）、彼は亡命中の従者に報奨を与えましたが、無政府状態は解消されませんでした。出公後7年（前470年）には彼の周囲の者たちが反乱を起こし、出公は再び宋へ逃れざるを得ませんでした。

最終的には、出公は悼公元年（前469年）に越の地で亡くなります。この後、衛国では叔父が出公の子を攻め滅ぼし、新たな君主が誕生します。出公の生涯は、彼自身の努力や戦略が必ずしも結果をもたらさないことを示す教訓でもありました。彼は戦乱の時代にあって、血と汗で築き上げた衛国の君主だったのです。

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