大夫

大夫（たいふ、だいぶ、たゆう）とは

大夫という言葉は、古代中国における身分を示す呼称であり、日本でも同様の意味が持たれています。使用される場面は異なりますが、一般的には身分や地位のある者に対して用いられます。

中国における大夫

中国では、大夫は周代から春秋戦国時代にかけての貴族層を指しました。この階級は、領地を持つ者であり、王族や公族を含む小領主が多く属していました。ここで、大夫は卿（けい）の下、士（し）の上の地位にありました。周代には、王室や諸侯に仕える者たちが大夫と呼ばれ、その上位者は卿として国政に参加しました。この時期、大夫は時に主君の権威を脅かしうる地位であり、情勢に応じて権力を持つようにもなりました。

春秋時代には地方の長官なども大夫と呼ばれ、後世においてもこの用語は重要な地位の代名詞として使われ続けました。また、唐の時代では、官制において従二品から従五品下を総称する言葉として頻繁に用いられています。今日の中国語では医者を指す言葉として使われるなど、意味は多岐にわたります。

朝鮮における大夫

朝鮮に関連する歴史文献『魏略』には、箕子の子孫が朝鮮侯を世襲していたことが記されています。その後、東周が衰退するにつれて王を僭称したりしましたが、大夫の礼が王に忠告をすることで、彼らが攻撃を中止させたという伝説があります。衛氏朝鮮では、大夫、大臣、相、将軍が共に協力して国家運営に取り組んでいました。

日本における大夫

日本にも大夫という称号が取り入れられ、特に律令制度の中で三位以上の太政官職、四位以上の寮職、さらには中国以下の国司の五位以上の官吏を指す言葉として使用されていました。大夫は日本の文献にも見られ、古代には倭人の使者が自らを大夫と名乗る事例もありましたが、これは非常に古い時代のことで、後の時代との関連性については不明な部分があります。

大夫としての官職は「だいぶ」とも読まれ、例えば「東宮大夫」のように使用されています。また、五位に叙せられた際にその官職の下に「大夫」と付記することもあり、「無官大夫」などのように称されることもありました。さらに女官においては、五位以上の者は命婦として区別されていました。律令制度が確立される前に「大夫」という称呼は存在しなかったとされ、後の記録によって加えられた文飾の一部とも見られています。

時代が進むにつれて、大夫の意味は変遷し、最終的には五位の通称とされるようになり、その後、身分ある者への呼びかけや、個人名の一部として用いられることもありました。そのため、大夫（特に「太夫」と表記される場合も多い）の地位は、庶民や地方の大名にとっては名誉の証となる場合もありました。

その他の関連用法

神道の用語では、伊勢神宮の神職が五位に叙せられたため、神職を指す言葉としても使用されます。また、江戸時代には大名の家老職を大夫と称することもありました。さらに、江戸時代の芸能の分野では、神楽の長や歌舞伎の座元を大夫と呼んだり、浄瑠璃の名称にも用いられたりしました。

遊郭においては、最高位の遊女を「大夫」と称したり、門付芸人に対する呼び名とも相まみえたりします。時には警察関係の隠語として被疑者を指す言葉として用いられることもあり、地域によっては印象の異なる意味を持つこともあるのです。

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