出川克己

出川克己：地方競馬を彩った名伯楽の軌跡

1953年生まれ、千葉県船橋市出身の出川克己氏は、船橋競馬場で活躍した元調教師です。父は同競馬場の調教師、出川己代造氏であり、兄2人も元調教師という、いわば競馬一家に生まれ育ちました。

当初は騎手を目指していましたが、身長制限のため断念。その後は、喫茶店経営など様々な職を経験した後、父である己代造氏の厩舎で厩務員として働き始めます。そして1996年、自身の厩舎を開業。

厩舎開業からの活躍と独自の厩舎運営

開業翌年の1997年には、管理馬アブクマポーロの活躍により、地方競馬界で注目を集める存在となります。アブクマポーロは帝王賞、東京大賞典など、数々の重賞レースを制覇し、出川氏の高い調教師としての能力を示しました。

出川氏の厩舎は、他の有力調教師と比較して出走回数が少ないことが特徴でした。これは、出川氏が「まず故障しない馬を作ること」を厩舎運営の絶対的なポリシーとしていたためです。体調が万全でない馬は出走させないという徹底した管理体制は、高い勝率、連対率に繋がりました。2003年には、南関東リーディングトレーナーに輝くなど、その成果は数字として表れています。

南関東競馬界では、出川氏と兄2人を合わせて「出川三兄弟」と呼ばれ、競馬ファンの間では知られた存在でした。また、厩舎開業当初は厩舎運営の経験がなかったため、主戦騎手だった石崎隆之氏から多くのアドバイスを受けたとされています。

数々の名馬を輩出

出川厩舎からは、アブクマポーロ以外にも多くの名馬が輩出されました。東京ダービーを制したヒノデラスタ、桜花賞を制したラヴァリーフリッグなど、数々の活躍馬が、出川氏の卓越した調馬技術と、徹底した管理体制によって生み出されました。これらの馬たちは、地方競馬の歴史にその名を刻むとともに、出川氏の調教師としての功績を証明する存在となっています。

引退とその後

2022年3月31日、出川克己氏は調教師を引退しました。長年にわたる地方競馬への貢献は、多くの競馬ファンに記憶されています。息子の出川賢弘氏は、現在吉田直弘厩舎の調教助手として競馬界で活躍を続けています。

エピソード：競馬界への複雑な思いと師事

出川氏が当初競馬界への進出をためらったのは、周囲の期待と父親への反発心があったためです。厩務員時代には、管理馬の故障による予後不良を経験し、「故障しない馬づくり」を徹底するようになったというエピソードも、彼の調教師としての信念を物語っています。また、厩舎開業当初は、石崎隆之騎手から様々なアドバイスを受け、その関係性は、彼の厩舎運営の基盤となりました。

出川克己氏の功績は、単なる数字以上のものがあります。それは、地方競馬に情熱を注ぎ、独自の厩舎運営で数々の名馬を育成し、地方競馬界に大きな足跡を残した、真の名伯楽としての物語なのです。彼の引退は、ひとつの時代の終わりを告げるものでしたが、その功績は、これからも語り継がれていくことでしょう。

主な管理馬一覧：

アブクマポーロ
ヒノデラスタ
ラヴァリーフリッグ
アートブライアン
ハセノガルチ
ベルモントアクター
ベルモントストーム
ベルモントノーヴァ
ベルモントサンダー
アブクマドリーム
ディアーウィッシュ
デザートレジーナ
スターシップ
ガンマーバースト
ヴァインバッハ
ナイトバロン
ジェネラルグラント
オメガインベガス
アスカリーブル
ダイコクファミリー

もう一度検索