出版-購読型モデル

出版-購読型モデルとは

出版-購読型モデル（Publish/subscribe）は、非同期メッセージングのパラダイムの一つです。このモデルでは、メッセージの送信者（出版側）は、特定の受信者（購読側）を意識することなく、メッセージを「出版」します。一方、受信者は、自身が関心のあるメッセージの「クラス」を指定し、そのクラスに該当するメッセージのみを受け取ります。この仕組みにより、送信側と受信側は互いに依存せず、柔軟なシステム構築が可能になります。

メッセージングの仕組み

出版-購読型モデルでは、メッセージは特定の受信者に直接送られるのではなく、クラス分けされた状態で配信されます。受信者は、どの送信者からのメッセージであるかを気にする必要はなく、関心のあるクラスに属するメッセージのみを受信します。この疎結合性が、システムの拡張性と動的なネットワーク環境への適応を向上させます。

このモデルは、メッセージキューパラダイムと対比されます。メッセージキューがメッセージを一時的に保存するのに対し、出版-購読型モデルはメッセージの配信に重点を置きます。一部のメッセージングシステムでは、両方のモデルをサポートしています。

メッセージのフィルタリング

出版-購読型モデルでは、受信者はすべてのメッセージを受信するわけではありません。メッセージの選択処理は「フィルタリング」と呼ばれ、主に2つの方式があります。

• - トピックベースフィルタリング: メッセージは「トピック」と呼ばれる論理チャネルに出版されます。受信者は、関心のあるトピックを購読し、そのトピックに出版されたすべてのメッセージを受信します。この方式では、すべての購読者が同一のメッセージを受け取ります。
• - コンテンツベースフィルタリング: メッセージの内容や属性に基づいてフィルタリングします。受信者は、特定の条件に合致するメッセージのみを受信します。この方式では、受信者側でメッセージを分類する処理が必要になります。

多くのシステムでは、これらのフィルタリング方式を組み合わせて使用し、より柔軟なメッセージ配信を実現しています。

ネットワーク構成

出版-購読型システムでは、通常、メッセージブローカーが中心的な役割を果たします。出版側はメッセージをブローカーに送信し、購読側はブローカーに購読を登録します。ブローカーは、メッセージをフィルタリングし、適切な購読者に配信する役割を担います。ブローカーは、メッセージを一時的に保存し、配信を保証する機能も提供します。

一方で、ブローカーを使用せず、メッセージのルーティングやフィルタリングを出版側や購読側に分散させるシステムも存在します。

利点

• - 疎結合: 出版側と購読側は互いに依存せず、相手の存在を知る必要もありません。これにより、システム全体の柔軟性が向上し、独立して開発、保守ができます。
• - 時間的な分離: 出版側と購読側は同時に動作している必要はありません。メッセージはブローカーに蓄積されるため、出版側が一時的にダウンしても、購読側はメッセージを受信できます。
• - スケーラビリティ: 出版-購読型モデルは、並列処理、メッセージキャッシング、ルーティングなどの技術を組み合わせることで、高いスケーラビリティを実現できます。大規模なシステムでも効率的な運用が可能です。

欠点

• - セキュリティ上の懸念: ブローカーを使用する場合、購読者がブローカーにメッセージ送信を要求する際に、セキュリティ上の問題が発生する可能性があります。不正なアクセスや、サービス妨害などのリスクがあります。また、ブローカーが過負荷になる可能性もあります。
• - 認証されていないメッセージ: ブローカーを使用しない場合でも、認証されていない出版者から不正なメッセージがシステムに送り込まれる可能性があります。これらのリスクを軽減するためには、暗号化などの対策が必要です。

まとめ

出版-購読型モデルは、疎結合で柔軟なシステムを構築するための強力なツールです。特に大規模で動的なシステムにおいて、その利点が発揮されます。ただし、セキュリティ上のリスクも考慮し、適切な対策を講じる必要があります。

参考文献

• - Publish/subscribe and SOA: How EDA extends SOA and why it is important Jack van Hoof

関連項目

• - イベント駆動型プログラミング
• - Observer パターン

もう一度検索