刃鳴散らす

刃鳴散らす：21世紀の東京を舞台にした剣戟劇

2005年9月30日、ニトロプラスより発売された成人向けゲーム『刃鳴散らす』は、21世紀の架空の日本帝国を舞台とした剣劇アドベンチャーです。発売に先駆け、『テックジャイアン』2005年9月号をはじめとするアダルトゲーム専門誌で紹介され、注目を集めました。さらに、ゲーム本編とは別に、『ザ・スニーカー』2005年6月号から全3回にわたって短編小説「枝篇 刃鳴散らす」が連載されるなど、多角的な展開を見せています。

荒廃した帝都東京：鋼鉄の刃が舞う都市

舞台となるのは、前大戦後、南北を他国に占領された日本帝国の首都・東京。しかし、ここでは銃声や爆音は聞こえません。代わりに、無数の刃がぶつかり合う、剣戟の音が響き渡ります。警察による火器規制が徹底されている一方、鋼鉄の刃による闘争が日常的に行われている、異様な都市なのです。市民は恐怖に怯え、兇徒は襲い掛かり、武人たちは戦い続ける、まさに混沌とした世界が描かれています。

主人公：武田赤音と宿敵：伊烏義阿の相克

物語の中心となるのは、二人の剣客、武田赤音と伊烏義阿の対立です。主人公である武田赤音は、古流剣術・刈流兵法の使い手で、東京経済を牛耳る瀧川商事の食客という立場にあります。少年のような容姿とは裏腹に、冷酷で残忍な性格を持ち、宿敵である伊烏義阿との決着に執着しています。一方、伊烏義阿は非合法武装集団「矛止の会」の傭兵で、赤音と同じく刈流兵法の使い手であり、魔剣「昼の月」を操ります。かつては赤音と兄弟子として切磋琢磨する間柄でしたが、赤音によって最愛の人を殺されたことから、彼への復讐を誓っています。

個性豊かなキャラクターたち

赤音と伊烏義阿以外にも、魅力的なキャラクターたちが物語を彩ります。瀧川商事の社長で男装の麗人である瀧川弓は、赤音に特別な感情を抱いています。刀鍛冶師の一輪は、赤音と伊烏義阿の戦いを静かに見守る傍観者として登場します。また、矛止の会の会士である渡四郎兵は、伊烏義阿と共に赤音への復讐を企てます。さらに、瀧川弓の護衛を務める武人、八坂や、瀧川商事の幹部社員である桂葉恭子、赤音の姉である武田笙など、様々な人物が物語に関わってきます。そして、特筆すべきは、軍人にして文筆家、魔導師でもある石馬戒厳の存在です。彼女は、クーデターを起こして軍事政権を樹立し、東京府知事を務める、非常にインパクトのあるキャラクターです。

重厚な世界観と魅力的な音楽

『刃鳴散らす』の世界観は、重厚で緻密に作り込まれており、21世紀の日本における独自の社会情勢や、剣戟による戦闘描写、そして登場人物たちの複雑な人間関係などが、プレイヤーを深く引き込みます。シナリオは奈良原一鉄、原画は大崎シンヤ、音楽はZIZZ STUDIOが担当し、小野正利によるオープニングテーマ「残夢」と、いとうかなこによるエンディングテーマ「蛍火」など、楽曲も魅力的です。

他のニトロプラス作品との関わり

『刃鳴散らす』は、ニトロプラスの他の作品とも繋がりを持っています。『サバト鍋-Nitro Amusement Disc-』には、石馬戒厳をメインとしたミニゲーム『戒厳聖都』が収録されており、『ニトロ+ロワイヤル -ヒロインズデュエル-』と『ニトロプラス ブラスターズ -ヒロインズ インフィニット デュエル-』では、石馬戒厳がプレイアブルキャラクター、またはパートナーキャラクターとして登場します。

『刃鳴散らす』は、緻密なシナリオ、魅力的なキャラクター、そして重厚な世界観が融合した、ニトロプラスを代表する作品の一つと言えるでしょう。剣戟アクションと人間ドラマが交錯する、忘れがたい体験を提供してくれるに違いありません。

もう一度検索