分別と多感

分別と多感 (Sense and Sensibility)

ジェイン・オースティンによって1811年に発表された長編小説『分別と多感』は、19世紀初頭のイギリスを舞台に、ダッシュウッド家の姉妹、エリナーとマリアンを中心に、恋愛と結婚を通して女性の生き方を描いた作品です。原題は「Sense and Sensibility」であり、「Sense」は分別や理性、「Sensibility」は多感さや感情を意味します。この二つの言葉が示すように、物語は登場人物たちの異なる価値観や感情が織りなす人間関係を通して展開していきます。

あらすじ

物語は、ダッシュウッド家の当主が亡くなり、遺産が先妻の息子ジョンに相続されるところから始まります。当主は、後妻であるダッシュウッド夫人とその娘たち（エリナー、マリアン、マーガレット）の生活をジョンに託しますが、ジョンの妻ファニーは、一家の財産を守ることに執心し、義母たちへの援助を拒みます。経済的な基盤を失ったダッシュウッド夫人たちは、親戚のミドルトン卿の好意で、バートン・コテージと呼ばれる小さな家に引っ越すことになります。

新たな生活の中で、姉妹はそれぞれ異なる恋愛を経験します。長女のエリナーは、ファニーの弟であるエドワード・フェラーズに惹かれますが、エドワードには秘密の婚約者がいることが発覚します。一方、次女のマリアンは、情熱的でロマンチックな性格から、魅力的な青年ウィロビーに夢中になりますが、ウィロビーは財産目当てで別の女性と結婚してしまいます。また、マリアンに密かに恋心を抱くブランドン大佐も登場し、物語は複雑な様相を呈していきます。

ロンドンでの社交生活を通して、エリナーとマリアンは、愛、裏切り、そして社会的な期待といった様々な試練に直面します。エリナーは、エドワードへの想いを秘めながら、彼の幸せを願おうと努めますが、ルーシーとの婚約の真相を知り苦悩します。マリアンは、ウィロビーに裏切られたことで心身を消耗し、病に倒れてしまいます。

最終的に、エリナーはエドワードとの誤解が解け、結ばれることになります。マリアンも、献身的なブランドン大佐の愛を受け入れ、結婚します。物語は、姉妹がそれぞれの経験を通して成長し、幸せを見つける姿を描いて幕を閉じます。

登場人物

エリナー・ダッシュウッド: 長女。19歳。知的で分別があり、感情を抑制する傾向がある。
マリアン・ダッシュウッド: 次女。16歳。美しく、情熱的で感情豊か。
エドワード・フェラーズ: ファニーの弟。誠実で優しい青年。エリナーと惹かれ合う。
ジョン・ウィロビー: ハンサムで魅力的な青年。マリアンを誘惑するが、財産目当てで別の女性と結婚する。
ブランドン大佐: 35歳。誠実で思慮深い紳士。マリアンに恋心を抱く。
ダッシュウッド夫人: エリナー、マリアン、マーガレットの母親。未亡人。
マーガレット・ダッシュウッド: 三女。13歳。
ジョン・ダッシュウッド: 先代のダッシュウッド氏の息子。ファニーの夫。
ファニー・ダッシュウッド: ジョンの妻。エドワードの姉。
ルーシー・スティール: エドワードの秘密の婚約者。野心的な女性。

作品のテーマ

『分別と多感』は、恋愛、結婚、家族、そして社会的な地位といったテーマを扱っています。特に、理性と感情のバランス、女性の自立、そして社会的な制約の中で生きる女性の葛藤が、物語の中心的なテーマとなっています。また、登場人物たちの恋愛を通して、真の幸福とは何か、愛とは何かといった普遍的な問いを投げかけています。

この作品は、ジェイン・オースティンの他の作品と同様に、当時のイギリス社会の風俗や人間関係を細やかに描写しており、現代の読者にとっても興味深い作品です。

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