分割統治

分割統治の概念と歴史的背景

分割統治（ぶんかつとうち）とは、特定の権力者がその支配を強化するために、被支配者を分割し対立を助長する手法を指します。この手法は、「divide and rule」とも称され、支配者が存在しない地域での連帯を断ち、支配の容易さを追求することを目的としています。

歴史に見る分割統治

古代ローマの事例

古代ローマは、征服した都市や地域の人々が共闘することを防ぐため、各都市ごとに異なる政策を実施しました。これにより、反乱の兆しを抑え込むことに成功したのです。具体的には、各都市の処遇に格差を設け、特定の地域が他地域との連帯を持たないように仕向けることから、分割統治の原則が実践されました。

19世紀の植民地経営

19世紀以降、欧米諸国は植民地経営において分割統治を戦略的に活用しました。特にイギリスはインドにおいて、多様な人種、宗教、地域的背景を持つ集団を互いに対立させることで長期的な統治を展開しました。この手法により、イギリスは数多くの反発を抑え込むことができたのです。また、ミャンマーにおける少数民族の問題も、この分割統治によって引き起こされたと言われています。

ルワンダとベルギーの影響

ベルギーやドイツは、ルワンダ・ブルンジにおいてフツ族とツチ族の間に格差を設け、少数派であるツチ族を中間支配層として扱いました。この政策は、後にルワンダ虐殺の遠因となったとされています。支配者は、このようにして民族間の緊張を利用し、自らの支配を強化しました。

他の地域での分割統治

また、ソマリランドのように複数国がひとつの地域を分割して統治する場合にも「分割統治」と呼ばれることがあります。複数の国家がそれぞれの地域の有利な点を利用し、支配を試みる様子が見られます。この場合、分割された後に併合されたと見なされない限り、分割統治として扱われるのです。

アパルトヘイト政策における分割統治

南アフリカ共和国のアパルトヘイト制度においても、分割統治の概念が適用されました。白人政権は、非白人間の結束を阻止するために、民族ごとに異なるグループに分ける施策を実施しました。インド系住民は「アジア人」として、ケープマレーとは異なる扱いを受け、一方でコイコイ人は「カラード」と分類され、黒人と比べて特権的な地位を享受しました。このような作為的な区分が非白人間の間にさらなる格差や差別を生む結果となったのです。

結論

分割統治の手法は、歴史的に見ても多くの国家が採用してきた戦略であり、その影響はさまざまな地域で見られます。この考え方を理解することは、個々の国家の歴史、さらには現在の国際社会の構図を探る上で重要な鍵となります。分割統治は単なる政治手法であるばかりでなく、人的・社会的な紐帯やアイデンティティの形成にも大きな影響を与えてきたのです。

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