分離不安障害

分離不安障害について

分離不安障害（Separation Anxiety Disorder, SAD）は、愛着を持つ人や場所から離れることによって強い不安を感じる精神的な障害です。この状態は特に子どもに多く見られ、生後6か月から3歳の間には通常の発達過程として観察されることもありますが、一定の年齢を過ぎてもこの症状が持続する場合は、病的と見なされることがあります。

定義と特徴

分離不安障害は、精神医学において分類される障害の一つです。アメリカ心理学会によると、通常の発育に伴う分離不安を超えた、特に強い苦痛と不安を伴う症状が特徴です。この障害は、18歳未満の若者には少なくとも4週間以上このような症状が続くことが診断の条件となります。また、DSM-5では大人においても6か月以上症状が続く場合に診断されることとされています。

分離不安障害は、時に犬や猫などのペットにも見られることがあります。これらの動物は、高い知能を持つため、特定の人や環境に強い愛着を持ち、それを失うことによって苦痛を感じることがあります。

有病率

この障害は、主に子どもや青年に見られ、全体の5%から25%が不安障害を抱えており、その中でも分離不安障害が最も多いとされています。多くの治療を受けている若年層の中で、約50%がこの障害と診断されています。分離不安障害の発症は通常早く、成人においても約7%がこの障害を持っています。調査データによると、児童の4.1%がこの障害を経験し、治療しなかった場合、約3分の1が大人になっても症状を抱え続けることが示唆されています。

鑑別診断

分離不安障害と正常な分離不安との違いは、症状の持続とその強度にあります。通常の分離不安は、自己が他者と異なることに気づく生後8か月から14か月の間に一般的に見られますが、分離不安障害では、何歳になっても愛着対象から離れることに対する不安が持続します。この状態が続くことで、日常生活に影響を及ぼし、不登校や引きこもりなどの問題を引き起こすことがあります。

分離不安障害は他の精神障害、特に全般性不安障害やパニック障害などと併発することが多く、これらの障害と症状の違いを正確に見定めることが診断において重要です。恐怖の対象が愛着のある人や場所であることを特定することで、分離不安障害の診断が支援されます。

診断基準

DSM-5によると、分離不安障害の診断には、以下の基準が求められます。

• - 診断基準Aでは、少なくとも3つ以上の症状を満たす必要があります。
• - 基準Bでは、子どもや青年は4週間以上、大人は6か月以上恐怖や不安が持続しています。
• - 基準Cにより、それが臨床的な苦痛または社会的、学業、職業等において機能障害を引き起こしていることが求められます。
• - 基準Dでは、他の精神疾患でよく説明できないことが必要です。

治療法

一般的に、分離不安障害に対する治療としては、心理療法が第一選択とされ、薬物療法は心理療法が効果を示さなかった場合に行われます。

心理療法

心理療法では、不安への曝露を中心とした行動療法や認知行動療法が主に用いられます。これらの治療法は、患者が抱える不安を軽減し、より良い対処方法を学ぶことを目指します。

薬物療法

薬物療法は、心理療法が効果を上げなかった場合に用いられることがあります。分離不安障害に特化した薬は現在のところ存在しないのが実情ですが、SSRI（選択的セロトニン再取り込み阻害薬）が第一選択として注目されています。一部の研究では、フルボキサミンなどの薬が有効であることが示されていますが、全体的な効果に関しては十分なことが確認されていない点もあります。

このように、分離不安障害は多くの人々に影響を及ぼす可能性がある精神的な障害であり、その理解と適切な対策が求められています。

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