選択的セロトニン再取り込み阻害薬

選択的セロトニン再取り込み阻害薬（SSRI）について

選択的セロトニン再取り込み阻害薬（SSRI、英: Selective Serotonin Reuptake Inhibitors）は、主にうつ病や不安障害の治療に用いられる抗うつ薬の一形態です。日本国内では約100万人以上の患者がこの薬を使用していると推定されています。SSRIは、シナプスにおいてセロトニンの再吸収を阻害することで、脳内のセロトニン濃度を高め、うつや不安の症状を改善しようとする薬です。

従来の三環系[[抗うつ薬]]は副作用が多く、副作用回避と選択的な効果を求めて開発されたことが背景にあります。SSRIは、肝毒性や心血管系の副作用、抗コリン作用による口渇や便秘といった副作用を抑えられたとされていますが、新たな副作用としてセロトニン症候群や離脱症候群といった症状が報告されています。

作用機序

SSRIは、シナプス前ニューロンから放出されたセロトニンが再取り込まれないようにすることで機能します。セロトニンは、シナプス後ニューロンの受容体に結合することで作用しますが、うつ状態にある人ではこれが難しくなるとされています。SSRIは特にセロトニントランスポーターに作用し、セロトニンの再取り込みを阻害します。その結果、シナプス間隙でセロトニンの濃度が高く保たれることとなり、うつ症状の改善を目指しています。

日本で一般的に処方されているSSRIには、フルボキサミン、パロキセチン、セルトラリン、エスシタロプラムの4種類があります。これらは化学構造や作用特性が異なるため、臨床的な使用法も異なります。

医療用途と効果

SSRIの効果については、研究によって評価が行われています。軽度から中等度のうつ症状に対する効果はそもそも偽薬との比較であまり顕著ではないことが示唆されており、一方で重度のうつ状態に対しては効果が臨床的に有意であるとされています。このような背景から、軽度のうつ病に対しては抗うつ薬を第一選択としない方針が示されることもあります。

副作用とリスク

SSRIの使用にあたっては、副作用やリスクも考慮しなければなりません。例えば、性機能障害や食欲の変化、体重の増減が一般的に見られる症状です。また、服薬を始めるときや減薬する際には注意が必要で、急に服用を停止すると不快な症状が発生することがあります。加えて、賦活症候群と呼ばれる中枢神経の刺激により不安感や衝動性の増加、自殺企図といった症状が現れることもあります。特に若年者への投与では自殺のリスクが高まることが懸念されています。

社会的影響

SSRIは社会において重要な役割を果たしていますが、同時にさまざまな問題も引き起こしています。特に事件や事故との関連性が問われることがあり、過去には特定の犯罪事件において、SSRIの服用が影響を与えたのではないかという指摘がありました。こうした影響を受けて、医療機関では治療方針の見直しや慎重な使用が求められています。

学会の動きと今後

日本うつ病学会ではSSRIの適切な使用を促進する委員会が設立され、患者や家族に向けたメッセージが発表されています。このような動きを通じて、より安全で効果的な治療が求められる中、引き続き、SSRIの特性や副作用を理解したうえでの慎重な使用が重要です。患者一人一人に適した治療法を選択することが、今後の課題となるでしょう。

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