刈谷市図書館

刈谷市図書館について

刈谷市図書館は、愛知県刈谷市にある公共図書館の総称です。現在は、住吉町にある刈谷市中央図書館と、東境町にある刈谷市富士松図書館の2館で構成されています。かつては城町に刈谷市城町図書館がありましたが、施設の老朽化により2024年5月に閉館しました。

図書館一覧

刈谷市中央図書館：刈谷市の中央部に位置し、市の主要な図書館として機能しています。
刈谷市富士松図書館：刈谷市の北部に位置し、地域住民の利用が多い図書館です。

図書室

刈谷市図書館の管轄下ではありませんが、市内には市民センターなどに図書室が4室あります。これらの図書室にも図書資料が配本されており、地域住民の読書活動を支えています。

歴史

刈谷市図書館の歴史は、1917年に開館した刈谷町立刈谷図書館に遡ります。ここでは、旧館時代から現代までの変遷を詳しく見ていきましょう。

旧館時代 (1917年 - 1970年)

大正時代には、全国的に図書館設置の動きが活発でした。しかし、刈谷図書館は、大正天皇即位の礼を記念して建設されたものではありません。1916年時点で、愛知県には公立24館、私立18館の計42館の図書館がありました。

1914年、刈谷町議会議員の宍戸俊治と医師の藤井清七が、刈谷藩侍医の村上忠順の蔵書約25,000冊を購入し、書庫・閲覧室とともに刈谷町に寄贈しました。この蔵書は、碧海郡高岡町（現在の豊田市）にあった村上忠浄の文庫に所蔵されていたものでした。また、同時期に、亀城尋常高等小学校の高須鉈吉も、刈谷町教育会の事業として図書館建設を主張していました。

1915年11月23日、愛知県から図書館の設置が認可され、1916年6月から1917年3月まで、後の書誌学者となる森銑三が図書の整理を行いました。1917年7月3日には、刈谷町立刈谷図書館が開館し、県知事や郡長などの来賓を迎えました。開館当初、蔵書数が1万冊を超える図書館は県内でも数少なく、刈谷図書館は県内有数の規模を誇っていました。建物は刈谷公会堂に隣接しており、建設費は1,378円でした。初代館長には高須鉈吉が就任し、開館時の蔵書数は25,805冊でした。

開館当初は日曜のみ開館でしたが、太平洋戦争後の1946年から1950年までは、祝日を除く毎日開館となりました。1950年に刈谷町が市制施行し刈谷市となったため、刈谷市立刈谷図書館に改称しました。1955年には閲覧室が増設され、1956年には初の専任館長が就任しました。1952年には巡回文庫が開始されましたが、1956年に休止となり、1959年には本館蔵書による巡回文庫を再開しました。1961年には、刈谷図書館協会が設立され、1965年には創立50周年記念式典が挙行されました。1967年には、大野一造の寄付により、児童室に大野文庫が開設されました。

新館時代 (1970年 - 1990年)

創立50周年を機に、図書館の改築が求められるようになり、1969年には刈谷市制20周年記念事業として新館の建設が決定しました。1970年1月に着工し、同年11月1日に新館が開館しました。鉄筋コンクリート造3階建てで、延床面積は1,735平方メートルでした。開館当時から手狭になることが予想されていましたが、オイルショックなどの影響で増築は実現しませんでした。開館時の蔵書数は約4万冊で、年間利用者数は1万数千人でした。

新館開館時には、刈谷青年会議所寄贈の刈谷JC文庫、1971年には刈谷ロータリークラブ寄贈の刈谷ロータリー文庫が設置されました。1977年には蔵書数が約6万冊、年間利用者数が約4万人、年間貸出冊数が約5万冊となり、同年には増改築工事が行われました。また、1979年には東刈谷地区の母親たちが「しののめ家庭文庫」を設立し、1982年には日本ユネスコ協会から児童書が寄贈されました。1986年には刈谷ライオンズクラブ寄贈の刈谷ライオンズ文庫が設置されました。

刈谷市中央図書館開館後 (1990年 - )

1988年には、蔵書数が約17万冊、年間利用者数が約16万人、年間貸出冊数が約25万冊となりました。1988年10月に新館の建設工事が着工し、1990年5月3日に住吉町に刈谷市中央図書館が開館しました。これに伴い、それまでの刈谷市立刈谷図書館は城町分館に改称されました。中央図書館には、貴重書を所蔵する村上文庫のために、空調付きの書庫が設置されました。1992年には、愛知県図書館資料のオンライン検索および相互貸借サービスを開始しました。

1996年時点では、愛知県の市立図書館で3番目の建築面積を有していました。1995年4月には、貸出冊数が5冊から10冊に増やされ、貸出対象が刈谷市民だけでなく碧海5市（刈谷市、知立市、安城市、高浜市、碧南市）の在住・在勤・在学者に拡大されたことで、貸出冊数は大幅に増加しました。1995年度の全館貸出冊数は約78万冊、中央図書館単体では約69万冊と過去最高を記録しました。1997年には、直木賞受賞作の全初版本136点の特集展示が行われました。1999年6月には、刈谷市富士松図書館の建設工事が着工し、2000年5月5日には東境町に刈谷市富士松図書館が開館しました。2000年4月には城町分館が刈谷市城町図書館に改称され、同年6月には、中央図書館、城町図書館、富士松図書館、一ツ木福祉センター図書室間で貸出や返却ができるサービスを開始しました。

2004年5月には、公式ウェブサイトを開設し、インターネット上での蔵書検索サービスを開始しました。同年には、第1回森三郎童話賞を開催しました。2005年には、中央図書館にAVコーナーが設置され、2010年にはインターネット用PCが導入されました。2014年には村上文庫のデジタルアーカイブの運用を開始しました。刈谷市図書館は、図書館設置認可から100年となる2015年を創設100周年とし、記念展や講演会を開催しました。2018年には、国立国会図書館デジタル化資料送信サービスを開始しました。2024年5月31日には、城町図書館が施設の老朽化により閉館し、中央図書館と富士松図書館の2館体制となりました。

各館の紹介

刈谷市中央図書館

中央図書館は、延床面積5,509.18平方メートルを誇る大規模な図書館です。刈谷市指定の有形文化財である刈谷町方文書や村上文庫などの貴重な書物を所蔵しています。特に、村上文庫は国文学関係者に広く知られています。中央図書館のシンボルとして、時計が設置されたカリヨンがあり、館内にはステンドグラスの窓があります。1992年には、愛知県快適空間賞を受賞し、高齢化社会にふさわしい公共建築として認められました。

村上文庫

村上文庫は、刈谷藩の御典医であった村上忠順が収集した約25,000冊の蔵書です。忠順は国学者としても知られており、「東の羽田野、西の村上」と称されました。生前には、貴重書が宮内庁などに貸し出されたこともあります。忠順の死後、弟子の深見篤慶が設立した千巻舎で保管され、1914年に刈谷町の篤志家である宍戸俊治と藤井清七によって刈谷町に寄贈されました。1916年から1917年にかけて森銑三が図書分類目録を作成し、この文庫が刈谷町立刈谷図書館の母体となりました。村上文庫には、忠順の著書、写本、古版本などが含まれており、国文学、地理、歴史などの分野において貴重な資料が数多く存在します。

刈谷市城町図書館

城町図書館は、鉄筋コンクリート造3階建てで、蔵書収容能力は65,000冊でした。延床面積は1,682.91平方メートルでした。敷地内には、刈谷町立刈谷図書館の設立記念碑や刈谷藩藩校の文礼館跡地の石碑が建っていました。1970年に刈谷市立刈谷図書館として開館し、1917年竣工の旧館に代わる図書館として機能しました。1990年に中央図書館が開館すると城町分館に改称され、2000年に刈谷市城町図書館と改称されました。しかし、2024年5月31日に施設の老朽化のため閉館しました。

刈谷市富士松図書館

富士松図書館は、丹羽英二建築事務所によって設計された、鉄筋コンクリート造2階建ての建物です。蔵書収容能力は66,000冊で、延床面積は1,560.02平方メートルです。1階には一般閲覧室、新聞雑誌コーナー、CD・AVコーナーなどがあり、2階には児童閲覧室、お話の部屋、学習室があります。中央図書館と城町分館が刈谷市中部に位置していたため、刈谷市北部住民からの要望に応える形で建設されました。建設費は約5億2000万円で、刈谷市市制施行50周年記念事業の一つとして2000年5月5日に開館しました。建物の背後には伊勢湾岸自動車道が走っています。

公民館等図書室

刈谷市内には、図書館の他に公民館などにも図書室が設置されています。1982年に東刈谷市民センター図書室、1984年に富士松市民センター図書室、1986年に小垣江市民センター図書室、1987年に北部市民センター図書室、1998年に一ツ木福祉センター図書室が開館しました。かつては中央児童館にも図書が配本されていましたが、現在は貸出を休止しています。

統計

2018年度には、全館で881,880冊の蔵書があり、1,202,754冊が貸し出されました。1人あたり貸出冊数は7.9冊でした。中央図書館の蔵書数は717,627冊、貸出冊数は933,232冊でした。2019年度の図書館費は307,572,000円、図書購入費は40,800,000円でした。正規職員は9人（うち司書資格保持者2人）で、その他嘱託職員、臨時職員、委託職員を含めると計59人が勤務していました。

利用案内

1995年度には、衣浦東部広域行政圏（刈谷市、安城市、高浜市、知立市、碧南市）の在住・在勤・在学者への貸出が開始され、開館時間の延長、貸出冊数の拡大が行われました。2011年には、刈谷市、知立市、高浜市、東浦町で定住自立圏協定を締結し、東浦町の在住・在学・在勤者も利用できるようになりました。

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