初恋〜浅き夢みし〜

シンガーソングライター村下孝蔵が1983年2月25日に発表した、通算4枚目となるオリジナル・アルバムです。この作品は、彼のキャリアにおいて最も商業的な成功を収めたアルバムとして広く認知されています。アルバムタイトルは、収録されている大ヒットシングル曲『初恋』に、日本の古典文学作品『源氏物語』の副題として知られる「浅き夢みし」を組み合わせたものです。

本作には、リリース当時既に多くのリスナーに愛されていた代表曲であるシングル『初恋』と『踊り子』が、それぞれアルバムバージョンとして収められています。これらの楽曲は、村下孝蔵ならではの繊細な歌詞とメロディーが光る珠玉のバラードであり、アルバム全体の雰囲気を決定づける重要な要素となっています。

特に表題曲ともいえる『初恋』は、シングル盤とは異なるアルバムバージョンで収録されており、聴き比べるとその違いを楽しむことができます。シングルバージョンがドラムの力強い導入で始まるのに対し、アルバムバージョンは静かでゆっくりとしたキーボードの音色から始まり、徐々にドラムへと移行する構成となっています。また、各楽器パートのミキシングバランスや全体的な響き（リバーブ）もシングル盤と微妙に異なっており、より空間的な広がりを感じさせるサウンドに仕上がっています。

アルバムには、シングル曲以外にも魅力的な楽曲が多数収録されています。『踊り子』のシングルB面曲であった『冬物語』や、『初恋』のシングルB面曲であった『丘の上から』も含まれており、当時のシングルの世界観をアルバムを通して深く味わうことができます。その他の収録曲としては、『夢の地図』、『モ・ザ・イ・ク』、『おいでよ』、『青い嵐』、『挽歌』、『私一人』などがあり、村下孝蔵の多岐にわたる音楽性が示されています。

アルバム全曲の作詞・作曲は村下孝蔵自身が手掛けており、彼のソングライターとしての才能が存分に発揮されています。編曲は『丘の上から』を除いて水谷竜緒が担当し、『丘の上から』のみ田代耕一郎が手掛けています。また、コーラスアレンジは町支寛二が担当しており、楽曲に深みを与えています。

『初恋〜浅き夢みし〜』は、その普遍的な魅力から世代を超えて聴き継がれており、過去に複数回再リリースされています。1990年にはポニーキャニオンのCD選書シリーズの一つとして、そして2013年にはより高音質とされるBlu-spec CD2フォーマットとして、いずれもオリジナルの音源にリマスタリング処理が施されて市場に再登場しました。これは、このアルバムが多くの音楽ファンにとって、今なお色褪せることのない名盤として位置づけられていることの証と言えるでしょう。

収録曲リスト

SIDE 1

初恋 (アルバム・バージョン)
夢の地図
踊り子 (アルバム・バージョン)
冬物語
モ・ザ・イ・ク

SIDE 2

おいでよ
青い嵐
挽歌
私一人
丘の上から

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