初恋のきた道

初恋のきた道：忘れ得ぬ愛の物語

1999年、中国で公開された『初恋のきた道』（原題：我的父親母親）は、数々の名作を世に送り出してきた張芸謀監督による感動的な物語です。監督自身の故郷である中国北部の農村を舞台に、純粋でひたむきな愛の物語が繊細に描かれています。主演を務めた章子怡は、本作で鮮烈な映画デビューを飾り、一躍スターダムにのし上がりました。

物語の舞台：変わらぬ故郷の風景

都会で暮らす主人公ユーシェンは、長年小学校教師として勤め上げた父親の訃報を受け、故郷である小さな農村に帰ります。父親の死をきっかけに、ユーシェンは母チャオディと、そして母の忘れがたい初恋の物語と向き合うことになります。

母の初恋：赤い服の少女と青年教師

物語は、チャオディが18歳の頃、村に初めて小学校が建設された出来事から始まります。その小学校に赴任してきた20歳の青年教師チャンユーとの出会いが、チャオディの運命を大きく変えます。

自由恋愛が稀だった時代、チャオディはチャンユーへの想いを、精一杯の愛情表現で示そうとします。それは、着飾って彼に会うこと、そして、精魂込めて作った料理を彼に届けようとすることでした。

チャンユーもまた、赤い服を着たチャオディに心を奪われていました。しかし、時代の波に翻弄され、チャンユーは村を離れることになります。別れの際に、チャンユーはチャオディにヘアピンを贈り、その想いを託しました。

運命の再会：高熱と、届いた声

チャンユーとの別れを悲しみ、高熱を出して倒れたチャオディ。意識を取り戻した時、彼女は小学校から聞こえてくるチャンユーの声を聞きます。実は、チャンユーはチャオディの病気を聞きつけ、許可なく村に戻ってきていたのです。

葬列と、古い校舎での授業

父親の遺体を村に運ぶ方法を巡り、伝統的な葬列を主張するチャオディと、現代的な方法を提案する村人たちとの間で葛藤が起きます。この状況の中で、ユーシェンは母の初恋の物語を思い起こし、その深い愛の物語に心を打たれます。

そして、ユーシェンは母と村人たちを助け、伝統的な葬列を実現させます。葬儀の後、ユーシェンは建て替えられることになった古い校舎で、最後の授業を行います。それは、過去と未来を繋ぐ、大切な儀式でもありました。

張芸謀監督のこだわりと、章子怡の鮮烈デビュー

『初恋のきた道』は、農村を舞台にした映画を数多く手がけてきた張芸謀監督の代表作の一つです。美しい自然描写と、登場人物たちの繊細な感情表現が見事に融合し、見る者の心を深く揺さぶる作品となっています。また、本作は、後に国際的なスターとなる章子怡の映画デビュー作という点でも注目に値します。

受賞歴と高い評価

『初恋のきた道』は、第50回ベルリン国際映画祭で銀熊賞（審査員グランプリ）を受賞するなど、高い評価を得ています。その美しい映像、そして忘れられない物語は、多くの観客の心に深く刻まれています。この映画は、時代を超えて語り継がれる、普遍的な愛の物語として、これからも人々に感動を与え続けることでしょう。

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