初梅 (駆逐艦)

日本海軍駆逐艦「初梅」の艦歴：舞鶴から台湾海峡そして解体へ

「初梅」は、日本海軍が建造した橘型（改松型）駆逐艦の14番艦であり、同型艦の中では最後の竣工艦でした。舞鶴海軍工廠で建造され、艦名は「その年初めて咲いた梅の花」を意味しています。

竣工後、舞鶴で訓練と待機に充てられた「初梅」でしたが、1945年6月28日、舞鶴近海で敵機の攻撃を受け、損傷を負います。その後7月30日には、小浜湾で触雷し座礁した「榎」の救難活動中に3度にわたる空襲を受け、さらに損傷が拡大しました。そのまま舞鶴で終戦を迎えた「初梅」は、10月5日に除籍されました。

終戦後、1945年12月1日、「初梅」は特別輸送艦に指定され、復員輸送に従事します。そして、日本が戦後賠償として艦艇を供出した際に、「初梅」もその対象となり、1947年7月6日、上海で中華民国に引き渡されました。中華民国海軍では仮に「接三号」と命名された後、「信陽（シンヤン）」と改名され、艦番号は「DD-15」とされました。

「信陽」は引き渡し時、艦体の状態が良好であったため、中華民国海軍は日本軍時代の12cm砲2門、2.5インチ砲3門、40mm機銃2門、20mm機銃4基などを搭載し再武装しました。その後、海防第一艦隊に編入され、国共内戦の渦中に巻き込まれます。

1949年4月22日、「信陽」は「逸仙」、「営口」（旧67号海防艦）などと共に、共産党軍に包囲された南京から脱出を試みました。脱出作戦中には、共産党軍の砲撃により「威海」（旧海防艦194号）が脱落する事態も発生しましたが、「信陽」は上海を経由して台湾にたどり着きました。台湾で修理が行われた際には、状態が悪く早期に解体された同型艦「華陽」（旧「蔦」）の部品が流用されたと伝えられています。

1955年には、アメリカ製の5インチ単装砲2門、40mm単装機銃7門、20mm機銃6基など、アメリカ海軍制式の兵装に換装され近代化が図られました。1956年から1957年にかけては南巡支隊に所属し、金門島を巡る紛争において哨戒任務に就き、中国共産党軍の艦艇とたびたび交戦しました。金門砲戦においては、台湾海峡の警備哨戒に従事するなど、重要な役割を担いました。

波乱に満ちた艦歴を送った「信陽」でしたが、1961年12月1日、除籍され、その後解体されました。日本海軍最後の駆逐艦として竣工し、戦後、中国海軍で活躍した「初梅」/「信陽」の生涯は、激動の時代の歴史を象徴すると言えるでしょう。

歴代艦長

※詳細な情報は参考文献を参照ください。

参考文献

片桐大自『聯合艦隊軍艦銘銘伝』光人社、1993年
海軍歴史保存会『日本海軍史 第7巻』第一法規出版、1995年
田村俊夫「中国に引き渡された日本の賠償艦艇全34隻の足取り」『帝国海軍 真実の艦艇史2』学習研究社〈歴史群像太平洋戦史シリーズ 51〉、2005年
外山操『艦長たちの軍艦史』光人社、2005年
* 歴史群像編集部『歴史群像 太平洋戦史シリーズ43 松型駆逐艦』学習研究社、2003年

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