前園泰徳

前園 泰徳（まえぞの やすのり）は、1972年5月7日生まれの日本の教育者・環境学者です。当初は生態学を専門としていましたが、後に環境教育にも深く関わるようになりました。東京大学で博士（農学）の学位を取得しています。地域での活動を通じて「赤とんぼ先生」という愛称で知られていましたが、後に発生した教え子殺害事件により、その経歴は大きく変わることになります。

大学卒業後、東京大学大学院で応用動物科学を専攻し、野生動物システム学研究室にて食物網の構造など、生態学の研究に取り組みました。博士課程修了後、九州大学や京都大学の大学院で研究員として勤務。特に京都大学大学院農学研究科では昆虫生態学研究室に所属しました。日本学術振興会特別研究員として奄美大島を訪れた際、自然環境の失われゆく現状を目の当たりにし、研究対象としての自然だけでなく、人間との関わりを通じた環境保全の重要性を痛感します。この経験が、彼を教育者の道へと進むきっかけとなりました。

その後、奄美大島の龍郷町に奉職し、環境教育推進指導員として「DEEP AMAMI」というプロジェクトを推進しました。地域住民や実業家、作家、生物学者など多様な立場の人々と連携し、環境教育活動を展開。この取り組みはマスメディアからも注目を集めました。また、奄美大島ではアサギマダラの渡り調査への協力なども行っています。龍郷町での活動後、福井県勝山市に移り、環境保全推進コーディネーターとして産官学民連携を担い、地域の持続可能な発展を目指す教育（ESD）を推進しました。勝山市内の小中学校における環境教育を手掛け、特に赤蜻蛉の調査研究を通じて生徒の環境意識や地域への定着意識向上に貢献。この中で、アキアカネが夏季に平地から山間部へ移動するという生態を初めて報告し、これらの業績が評価され、2014年には勝山市特別功労賞を受賞しています。

教育活動の一環として、身近な生物を取り上げた児童向けの図鑑など、多数の著作を上梓しています。これらの図鑑は環境教育の普及に貢献し、編集者にも影響を与えました。また、環境問題や社会情勢に対する独自の視点を持ち、特に子供たちへの環境教育を社会が最優先すべき課題と提唱していました。

しかし、2015年3月、福井県勝山市内で、当時不倫関係にあった教え子の東邦大学大学院生を殺害した容疑で逮捕されます。その後、殺人罪で起訴されましたが、裁判では被告人側による嘱託殺人の主張が一部認められ、2016年9月の裁判員裁判で嘱託殺人罪により懲役3年6ヶ月の実刑判決が言い渡されました。この判決は控訴されることなく確定しました。

刑事裁判の判決に納得できなかった遺族は、前園氏に対して損害賠償を求める民事訴訟を提起。2021年1月、千葉地方裁判所は殺害依頼は被害者の真意ではなかったと認定し、前園氏に対し約8593万円の支払いを命じる判決を下しました。

教育者・環境学者として地域社会や環境教育に貢献し、受賞歴もある一方で、教え子殺害という重大な事件を引き起こし、実刑判決を受けるという、両極端な側面を持つ人物です。趣味は写真であり、自身が執筆した図鑑に掲載する生物写真や、他者の書籍に提供したサンゴ礁の写真など、写真家としても活動していました。

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