前山久吉

前山久吉：実業家・銀行家の生涯

前山久吉（まえやま ひさきち、1872年11月7日 - 1937年7月31日）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の銀行家、実業家です。1912年に内国貯金銀行を設立し、浜松銀行の頭取などを歴任しました。

生い立ちと初期の経歴

1872年、前山久吉は愛知県名古屋市に生まれます。幼少期は家計が苦しく、三菱銀行で給仕として働きながら、1886年に上京し、三菱銀行東京本社に勤務しました。その後、三井銀行函館支店、日本鉄道、成田鉄道などを経て、実業界での足がかりを築きました。

実業家としての手腕

前山は、日本絹綿紡績や東京信託などの取締役を歴任した後、浜松銀行頭取、共同保全社長、日本不動産会長などを務めました。さらに、鐘淵紡績、日本徴兵保険、亜細亜煙草、日本形染、日本絹糸紡績、王子製紙、日本製粉、三越など、多くの企業の役員を兼任し、その経営手腕を発揮しました。

内国貯金銀行の設立

1912年には、内国貯金銀行を設立し、取締役に就任しました。これは、彼の銀行家としてのキャリアにおける重要な業績の一つです。

趣味人としての一面

前山は、趣味人としても知られていました。特に骨董蒐集に熱心で、その高じた趣味が高じて、自ら山を買って窯を構え、作陶にも挑戦しました。観空庵という号を持ち、晩年は糖尿病を患いながらも、美術品蒐集を楽しんだと言われています。そのコレクションは数千点に及んだと伝えられています。

年表

1872年：名古屋市にて出生
1886年：三菱銀行東京本社勤務を命じられ、上京
1898年：日本鉄道に入社し、主事調査係長に昇進
1901年：成田鉄道事務長に就任
1904年：月島製鋼常務取締役に就任
1906年：フィリピン、香港、南清を視察。日本絹綿紡績設立に関わり専務取締役就任
1907年：日本絹綿紡績が鐘淵紡績に合併され、同社取締役に就任
1908年：王子製紙の専務取締役に就任。山林疑獄事件で投獄される
1910年：王子製紙苫小牧工場完成
1912年：内国貯金銀行設立し取締役に就任。日本製粉取締役に就任
1916年：東京信託取締役会長に就任。日本製粉の専務取締役に就任
1918年：日本徴兵保険取締役に就任
1919年：浜松銀行頭取に就任。亜細亜煙草設立
1921年：共同保全設立し社長に就任
1926年：東京信託を日本不動産に改称し、引き続き取締役会長
1931年：三越の取締役に就任
* 1937年：死去

家族

前山は、とく、敏子の2人の妻を娶りました。養嗣子の宏平は大和生命の社長を務め、娘たちはそれぞれ加藤定雄、丹羽長徳、前原達一、鈴木孝、森美秀といった名家の人物と結婚しました。

前山久吉は、実業界での成功に加え、趣味人としての豊かな一面も持ち合わせた人物でした。彼の多岐にわたる活動は、日本の近代経済史における重要な足跡として記憶されています。

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