前川謙三

前川 謙三の生涯と業績

前川 謙三（まえかわ けんぞう、1873年11月13日 - 1946年3月1日）は、日本を代表する写真家であり、その作品や教育への貢献から、写真界での重要な人物となりました。彼は、小西寫眞専門学校（後の東京工芸大学）の創立時の講師としても知られています。

幼少期と写真業への道

彼は福井県大野郡鹿谷村（現在の勝山市鹿谷町）の医師、前川九兵衛の次男として生まれました。鹿渓小学校を卒業後、1888年に福井出身の丸木利陽が経営する丸木写真館で写真技術を学びました。契約は5年間でしたが、その後も写真館に残り技術者として働き続けました。

1895年からはサンマース英語学校に通い、1898年には渡米。アメリカでは写真技術を深く学ぶと同時に、丸木の意向でレンブラント採光法を取り入れることに興味を持ちました。彼はサンフランシスコの写真館での学びを経て、1901年にセントルイスのギュイリン写真専門学校に入学し、そこで採光法と印画法を学びました。

六桜社での活躍

1906年に丸木写真館を辞めた後、六桜社写真部に技師として加わりました。この期間中、彼は全国各地で写真術の講習会を開催し、写真関連のイベントにも参加しました。特に、1908年の時事新報社の全国美人写真審査では審査員として名を馳せ、多くの著名な写真家や芸術家と名前を連ねました。彼はまた、小西六系の『写真月報』に技術論文を発表し、特に「下岡蓮杖翁肖像」が有名です。

写真館の開業と振り返る歴史

1909年には横浜市に「前川写真館」を開業しましたが、開業からわずか3日後に火災で焼失してしまいます。幸運にも六桜社の支援を受けて、1910年には新しい場所で再開業しました。1915年には東京美術学校に臨時写真科が設立された際、寄付金を提供し、自ら講師として招かれましたが、体調不良により1年で辞めることとなりました。

東京美術学校が1942年に閉校するまで、彼は写真教育に深く関わり続けました。1923年には関東大震災で前川写真館が再び焼失しましたが、彼は無事であり、被災地の写真記録にも取り組みました。これらの写真は非常に価値のある資料となっています。彼の写真館はその後も再開され、経営を続けるも、時代の流れにより苦難が続きました。

晩年と遺産

第二次世界大戦中には長野に疎開しましたが、1945年の横浜大空襲で再度店舗が焼失しました。戦後、彼は息子と共に写真館を再開し、地元での活動を続けましたが、1946年、療養先で風邪をこじらせて亡くなりました。享年73。彼の写真館は、その後1957年に神奈川区に移転し、2024年8月末には閉館することが予定されています。

おわりに

前川 謙三は、その独創的な技術と教育者としての役割を通じて、日本の写真文化に大きな影響を与えました。彼の跡を継ぐ者たちが、彼の業績を引き続き尊重し、発展させていくことが期待されます。

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