前野隆司

前野 隆司（まえの たかし）は、1962年、山口県で生まれた日本の学者です。現在は武蔵野大学ウェルビーイング学部の学部長および教授を務めており、慶應義塾大学の名誉教授でもあります。幸福学やイノベーション教育を主要な研究テーマとし、システムデザインや脳科学など、多岐にわたる学術領域で活動を展開しています。

経歴
前野隆司は1962年に山口県で誕生しました。幼少期に広島や鳥取へ転居を経験し、複数の小学校・中学校で学びました。広島市立庚午中学校を卒業後、私立修道高等学校に進学し、1980年に卒業しています。

大学は東京工業大学（現在の東京科学大学）工学部機械工学科で学び、1984年に卒業。さらに同大学の理工学研究科機械工学専攻修士課程に進み、1986年に修了しました。修士課程修了後、キヤノン株式会社に入社し、生産技術研究所に勤務しました。1990年7月からは、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校機械工学科にて、約2年間にわたり訪問研究員として研究活動に従事しました。帰国後、1993年12月には東京工業大学より博士（工学）の学位を取得しています。

1995年、慶應義塾大学に転じ、理工学部機械工学科の専任講師に着任しました。1999年に助教授に昇任し、2001年にはハーバード大学応用科学・工学部門の訪問教授も務めました。2006年には慶應義塾大学理工学部機械工学科の教授となります。

2008年からは、新設された慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科（SDM研究科）の教授として、その立ち上げと発展に深く関わりました。特に2011年から2019年9月まで、SDM研究科委員長および付属システムデザイン・マネジメント研究所長を兼任し、研究科運営の要職を務めました。また、2017年から2024年3月まで、慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長も兼任し、研究テーマとしてのウェルビーイングを推進しました。

2024年からは、武蔵野大学ウェルビーイング学部の学部長および教授を兼任しており、新しい教育・研究拠点の構築に携わっています。2025年3月末をもって慶應義塾大学教授を退任し、同大学の名誉教授となる予定です。

研究活動と著作
前野隆司の研究は、機械工学から始まり、ロボティクス、脳科学、システムデザインといった分野を経て、特に人間の「幸福」を科学的に探求する「幸福学」の第一人者として広く認識されています。システム論的な視点から幸福の構成要素やメカニズムを分析し、個人や社会全体のウェルビーイング向上に関する知見を提供しています。また、イノベーションを生み出すための教育手法や、創造性の研究、さらには脳の機能や無意識の働きについても深く探求しています。

学会活動としては、ウェルビーイング学会の代表理事を務めるほか、日本システムデザイン学会副会長、日本創造学会理事などの役職を歴任し、関連分野の研究振興と普及に貢献しています。

著作は多数に上り、専門的な内容から一般読者向けの啓蒙書まで幅広く執筆しています。『幸せのメカニズムー実践・幸福学入門』や、脳科学に関する『脳はなぜ「心」を作ったのか』などは代表的な著作として知られています。単著のみならず、配偶者である前野マドカ氏との共著による家族やパートナーシップに関する幸福論、仏教学者、心理学者、経営学者、さらにはボディビルダーや漫画家など、異分野の専門家や著名人との対談・共著も多く出版しており、その学際的な関心と幅広い交流が窺えます。これらの著作を通じて、幸福やwell-beingというテーマを様々な角度から掘り下げ、多くの人々に影響を与えています。

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