剣嵐の大地:詳細な物語解説
ジョージ・R・R・マーティンによる
ファンタジー小説シリーズ『
氷と炎の歌』の第3部にあたる『剣嵐の大地』は、2001年に
ローカス賞ファンタジー長篇部門を受賞した傑作です。この物語は、中世ヨーロッパを彷彿とさせる架空の世界を舞台に、魔法が存在し、一つの季節が数年も続くという特異な世界観の中で、鉄の玉座を巡る複雑な争いを描いています。物語は、ウェスタロス大陸の内戦、壁における極北からの侵略、そして東の大陸でのターガリエン家の復権という三つの主要な筋で展開します。
あらすじの概要
この物語は、前作『王狼たちの戦旗』の直後から始まり、七王国は依然として五王の戦いの最中にあります。レンリー・バラシオンは既に亡くなっていますが、ロブ・スターク、ベイロン・グレイジョイ、ジョフリー・バラシオン、そしてスタニス・バラシオンが王位を争い続けています。スタニスはキングズランディングを攻撃しましたが、ラニスター家とタイレル家の同盟によって敗退。一方、マンス・レイダー率いる野人の大軍が壁へ進攻し、東方ではデナーリス・ターガリエンがペントスへと向かっています。物語はAL299年の終わりに始まり、AL300年の出来事を追います。
七王国での出来事
北部/リヴァーランド
リヴァーランでは、キャトリン・スタークが捕虜のジェイミー・ラニスターと娘たちの解放を取引しますが、ジェイミーは傭兵に捕まり右手を失います。その後、彼はブライエニーに救出されます。ロブ・スタークはラニスター軍を破るものの、フレイ家との婚約を破棄してジェイン・ウェスタリングと結婚したことで、フレイ家との関係が悪化。さらに、リカード・カースタークを処刑したことで軍が分裂し、窮地に立たされます。アリア・スタークは、ベリック・ドンダリオン率いる旗標なき兄弟団と出会い、サンダー・クレゲインに捕まります。そして、ロブはフレイ家との結婚式でフレイ家とボルトン家の裏切りによって殺害されるという悲劇に見舞われます。この事件は後に「釁られた婚儀」として知られることになります。
南部/キングズランディング
ブラックウォーターの戦いで敗北したダヴォス・シーワースは、スタニス・バラシオンの元に戻り、メリサンドルの影響を排除しようとします。一方、キングズランディングではジョフリー王とマージェリー・タイレルの結婚が決まり、サンサ・スタークはティリオン・ラニスターと結婚させられます。ジョフリー王は結婚式で謎の死を遂げ、ティリオンが犯人に仕立て上げられ裁判にかけられます。その後、オベリン・マーテルが代理闘士としてグレガー・クレゲインと戦い、命を落としますが、ティリオンはジェイミーとヴァリスに助けられ脱獄します。ティリオンは、復讐心から父タイウィンを殺害して逃走します。ジェイミーはブライエニーにエダード・スタークの剣を渡し、アリアとサンサを探すよう託します。サンサはリトルフィンガーに助けられ、高巣城へと向かいますが、リトルフィンガーの策略によって義母ライサを失います。
壁
冥夜の守人の分隊は、クォリン・ハーフハンドからの知らせを待っていますが、亡者の攻撃を受けて撤退を余儀なくされます。サムウェル・ターリーは
黒曜石の剣で異形を倒し、冥夜の守人では反乱が勃発。一方、ブラン・スタークは
三つ目の鴉の夢に導かれ、壁の北を目指します。ジョン・スノウはマンス・レイダーの前に連れて行かれ、野人の一員として認められるように振舞います。その後、ジョンは野人から逃げ出し、壁に戻りますが、野人たちの大軍が黒の城を攻撃。スタニス・バラシオンが援軍に到着し、野人の攻撃を食い止め、ジョンは冥夜の守人の総帥に選出されます。
東方
デナーリス・ターガリエンは、奴隷兵士を得るため奴隷商人湾に向かいます。アスタポアで穢れなき軍団を手に入れたデナーリスは、ユンカイを陥落させ、奴隷たちを解放し、さらにミーリーンを包囲します。ジョラー・モーモントの裏切りが発覚し、追放。デナーリスはミーリーンで統治を始めることを決意します。
主要人物の視点
物語は複数の視点人物を通して語られます。各章には、その章の視点人物の名前が付けられており、物語を多角的に捉えることができます。主な視点人物は以下の通りです。
チェット(プロローグ)
ジェイミー・ラニスター
ジョン・スノウ
キャトリン・スターク
ティリオン・ラニスター
サンサ・スターク
アリア・スターク
ブラン・スターク
サムウェル・ターリー
ダヴォス・シーワース
デナーリス・ターガリエン
メレット・フレイ(エピローグ)
日本語版
本書は、旧版と改訂新版が存在し、改訂新版では用語が変更されています。
ドラマ版
HBOのドラマシリーズ『
ゲーム・オブ・スローンズ』では、本作が第3シーズンと第4シーズンの原作となりました。ドラマでは、一部の設定や展開が原作と異なります。
第3シーズン:ジェイン・ウェスタリングの代わりにタリサが登場、ヴァーゴ・ホウトは登場せず、ジェイミーとブライエニーはロックに捕まる。メリサンドルはジェンドリーの血を使用。
第4シーズン:ヴァーゴ・ホウトの代わりにロックが登場。ブラン一行が反乱軍に捕まり、脱出。スタニスとダヴォスが鉄の銀行から融資。アリアがブライエニーと戦い、ハウンドが敗れる。
『剣嵐の大地』は、複雑な人間関係、裏切り、そして絶望的な状況の中で希望を求める物語です。各キャラクターの成長や変化、そして壮大なスケールでの戦いが、読者を魅了し続けるでしょう。