王狼たちの戦旗

『王狼たちの戦旗』詳細解説



『王狼たちの戦旗』(原題:A Clash of Kings)は、ジョージ・R・R・マーティンによるファンタジー小説『氷と炎の歌』シリーズの第二部です。この作品は、架空の世界ウェスタロスを舞台に、複数の勢力が王位を争う複雑な物語を展開します。1999年にはローカス賞ファンタジー長編部門を受賞し、その深遠な世界観と魅力的なキャラクターは多くの読者を魅了しました。

あらすじの概要



物語は、中世ヨーロッパを彷彿とさせる世界を舞台に、魔法が存在し、季節が数年も続くという独特な設定が特徴です。物語は三つの主要な筋で展開します。

1. ウェスタロス大陸の内戦: 七王国における鉄の玉座を巡る激しい争いが繰り広げられます。
2. 〈壁〉の防衛: ウェスタロスの北部にある巨大な〈壁〉では、極北からの侵略者との戦いが描かれます。
3. デナーリスの旅: 東の大陸エッソスでは、ターガリエン家の血を引くデナーリスが、王位奪還を目指して旅を続けています。

物語の詳細



『王狼たちの戦旗』は、前作『七王国の玉座』の終盤から物語が始まります。七王国は内戦状態にあり、〈冥夜の守人〉は〈壁〉の北に住む謎の〈野人〉の調査を開始します。一方、東方ではデナーリスが七王国征服の準備を進めています。

七王国での戦い



鉄の玉座を巡る内戦は、さらに複雑化します。ジョフリー、レンリー、ロブという三人の王に加え、ベイロン・グレイジョイが鉄諸島の王を宣言し、北部の西岸を攻撃します。これにより、戦いは〈五王の戦い〉へと発展します。スターク家の本拠地ウィンターフェルでは、ロブの弟ブランが昏睡から目覚め、城の指揮を執ります。ブランは、〈三つ目の鴉〉の夢に導かれ、ジョジェンとミーラという新しい仲間と出会います。

一方、スタニス・バラシオンも王位を主張し、メリサンドルという女祭司の助けを得て、戦いに参戦します。レンリーとスタニスは、共通の敵であるラニスター家に対抗するための同盟を模索しますが、交渉は決裂し、レンリーが謎の影によって暗殺されます。レンリーの軍勢の多くはスタニスに合流し、スタニスの勢力は拡大します。

キングズランディングでは、ティリオン・ラニスターが〈王の手〉に就任し、甥であるジョフリーの玉座を守るため、様々な策を講じます。彼はタイレル家との同盟を成功させ、ジョフリーはマージェリー・タイレルと結婚することになります。また、マーテル家とも同盟を結びます。

スターク家の里子であったシオン・グレイジョイは、父ベイロンに認められるため、ウィンターフェルを占拠しますが、ブランとリコンは逃走します。シオンは偽の死体をでっち上げますが、ボルトン家に裏切られ、ウィンターフェルは破壊されます。

アリアは男の子に変装し、〈冥夜の守人〉の新兵に紛れて旅をしますが、ラニスター家に捕らえられます。ハレンの巨城で、ジャクェン・フ=ガーに助けられ、脱出に成功します。

スタニスの軍勢がキングズランディングを攻撃しますが、ティリオンの策によって撃退されます。タイウィン・ラニスターとタイレル家の軍勢も到着し、スタニスは敗走します。

〈壁〉での戦い



〈冥夜の守人〉の偵察隊は、〈壁〉の北で〈野人〉たちが団結していることを知ります。ジョン・スノウは、クォリン・ハーフハンドと共に偵察に出ますが、〈野人〉に捕らえられ、潜入を命じられます。ジョンはクォリンを殺し、〈野人〉の大軍が〈壁〉に向かっていることを知ります。

東方でのデナーリスの旅



デナーリスは、3頭のドラゴンと共に東へ旅を続けます。クァースでドラゴンは注目を集めますが、玉座奪還の助けは得られません。〈不死者の家〉で、幻覚を見せられたデナーリスは、ドラゴンに助けられ危機を脱します。

視点人物



この物語は、以下の10人の視点人物を通して語られます。

メイスター・クレッセン
ティリオン・ラニスター
キャトリン・スターク
ダヴォス・シーワース
サンサ・スターク
アリア・スターク
ブラン・スターク
ジョン・スノウ
シオン・グレイジョイ
デナーリス・ターガリエン

日本語版とドラマ版



日本語版は、岡部宏之訳による旧版と、酒井昭伸訳による改訂新版が存在します。また、本作はHBOのドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』のシーズン2の原作となっており、ドラマ版では、原作から一部変更点があります。

ドラマ版における主な変更点



ミーラとジョジェン・リードは登場せず、シーズン3で登場する。
シオンはウィンターフェルを占拠後、鉄諸島人に昏倒させられる。
ラムジー・スノウは登場せず、シーズン3で登場する。
アリアは、ハレンの巨城でルース・ボルトンではなくタイウィン・ラニスターに仕える。
ジェイン・ウェスタリングは登場せず、タリサという女性が登場する。
デナーリスの暗殺未遂は、クァースではなくアスタポアで発生する。

『王狼たちの戦旗』は、複雑な人間関係、権力闘争、そして魔法が絡み合う壮大なファンタジー作品であり、読者を魅了し続ける不朽の名作です。

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