創始者効果

創始者効果とは

創始者効果（そうししゃこうか、英語：founder effect）は、隔離された個体群が新たに形成される際に、その個体群が元にした個体群と異なる遺伝子頻度を持つ現象を指します。この概念は生態学や集団遺伝学の重要な用語として広く認識されており、場合によっては種の進化にも寄与します。

歴史的背景

創始者効果の理論的な研究は1930年代から1940年代にかけて生物学者シーウォル・ライトによって行われました。1952年には、エルンスト・マイヤーがこの現象を定義し、元となる個体群の遺伝的変異が新しい個体群に及ぼす影響について説明しました。彼によると、新しい個体群は元の集団からの遺伝的多様性の一部しか引き継がれず、これにより新たな遺伝子頻度の形成が起こり得ます。これにより、新しい個体群は外見や遺伝子において元の個体群とかなり異なる特徴を持つようになる可能性があるのです。

モデルの例

創始者効果を示す典型的な例として、元の個体群がほぼ同数の青と赤の個体から成る場合が挙げられます。この個体群から無作為に抽出された個体によって、3つの新しい小型個体群が形成されることがあります。この際、片方の色の個体だけが新しい集団を構成するか、または一方が優勢になることが見られます。この現象は種分化を促進する重要な要因と考えられています。

生物地理学における創始者効果

創始者効果は特に島嶼生物学の分野で重要です。1883年のクラカタウ島の噴火などでは、すべての生命が消えた後の生物の再形成が研究され、新しい個体群の遺伝的変化を探る際の貴重なモデルとなりました。また、1960年代に誕生したアイスランドのスルツェイ島などでも、噴火後の生物移住に関する研究が進められています。

人間の実例

人類においても、創始者効果は非常に興味深いトピックです。例えば、ケベック植民地の初期の移民6000人のうち2600人が有効な創始者人口とされ、彼らの内部結婚により、12世代を経て80倍の人口に増加しました。その結果、この地域独自の遺伝的変異が観察されています。

また、創始者効果は、競合する系統の絶滅が引き起こすこともあります。遺伝的情報は次の世代に半分ずつ引き継がれますが、多くの子孫を持った個体群でも、系統が絶滅した場合には遺伝情報の一部が失われる可能性があります。近年の研究によって、氷期末にベーリング海峡を越えた少人数の移住者が、現代の子孫に70の遺伝的痕跡を残したことが示されています。

創始者変異

「創始者変異」という概念もあり、特定の個体における突然変異が小規模な集団内で広まることを意味します。この場合、創始者変異が広がることを「創始者効果」と呼ぶこともありますが、これは隔離なしで進行するため、通常の創始者効果とは異なります。

結論

創始者効果は、遺伝的多様性の形成や新種の進化において重要な役割を果たしています。この理解は、さまざまな分野の生物学や遺伝学における研究や保護戦略において、貴重な知見を提供するものとなります。

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