劇団維新派

日本にかつて存在した劇団の一つに「維新派（げきだん いしんは）」があります。

その歴史は1970年にさかのぼります。大阪教育大学出身の松本雄吉氏が中心となり、「日本維新派」として活動を始めました。その後、1987年に劇団名を「維新派」と改めました。

独自の創造スタイル

この劇団の大きな特徴は、「スクラップ＆ビルド」と呼ばれる独自の創造スタイルにありました。およそ50名の劇団員が一体となり、およそ1ヶ月半から2ヶ月もの時間を費やして巨大な野外劇場を手作りで建設します。そして公演が幕を下ろすと、今度はその劇場を自らの手で解体・撤収するという一連の作業を行うのです。

さらに、公演会場には様々な種類の飲食を提供する「屋台村」が併設されることも通例となっており、この巨大な手作り劇場と合わせて、維新派公演の名物として多くの観客に親しまれました。

作品世界と「ヂャンヂャン☆オペラ」

維新派の作品世界は、主に少年少女たちの青春群像を描くことを基軸としながらも、どこか退廃的で懐かしいノスタルジアを誘う独特の雰囲気を醸し出しています。

彼らの劇表現における最大の特徴は、その言葉の使い方にあります。一般的な演劇のように会話で物語が進むことは少なく、台詞の多くは単語レベルに分解され、これを5拍子や7拍子といった特有のリズムに乗せて、大阪弁で語られるのです。この独特の表現形式は「ヂャンヂャン☆オペラ」と名付けられました。この名称は、大阪の下町、新世界に実在する「ジャンジャン横丁」からヒントを得て命名されたものです。

活動と終焉

維新派は国内だけでなく、海外においても数多くの大規模な公演を実現させてきました。新作の大規模公演は通常年に一度のペースで行われましたが、時折、屋内の劇場やプレ公演といった小規模な形態での上演も試みられました。

作家として知られる嶽本野ばら氏が、およそ1年間ほど劇団に在籍していた時期もあり、1990年の公演『echo』には出演者として名を連ねています。

維新派は2017年10月から11月にかけて台湾の高雄で行われた公演『アマハラ』を最後に、その活動に幕を閉じ、解散しました。

受賞歴

その活動は高く評価され、数々の賞を受賞しています。

1996年『ヂャンヂャン☆オペラ ROMANCE』：大阪府舞台芸術奨励賞
1999年『ヂャンヂャン☆オペラ 水街』：大阪府舞台芸術賞
2002年『カンカラ』：第2回朝日舞台芸術賞
2004年『キートン』：第12回読売演劇大賞優秀演出家賞
* 2008年『呼吸機械』：第8回朝日舞台芸術賞 アーティスト賞、平成20年度芸術選奨文部科学大臣賞

公演活動の他にも、展覧会やラジオドラマなども手掛けていました。例えば、1997年と1998年には「維新派展」を開催し、1998年にはNHK-FMでラジオドラマ「少年漂流伝」が放送されています。

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