劉煒 (明)

劉煒（りゅう い、生年不詳 - 1461年）は、明代中期の官僚であり、字を「有融」と称しました。寧波府慈谿県を本貫とします。彼の生涯は、明朝の政治的な混乱と官僚社会の権力闘争が複雑に絡み合った時代を象徴しています。

1439年（正統4年）に進士に及第し、官僚としてのキャリアをスタートさせました。1442年（正統7年）には南京刑科給事中に任じられ、その職務に励みました。しかし、当時の官僚社会は必ずしも公正とは言えず、副都御史の周銓が私怨で御史を鞭打つという事件が発生しました。これに対し、1447年（正統12年）に劉煒は同僚とともに周銓を弾劾しました。この行動は、不正を許さない彼の強い正義感を示すものでした。しかし、この弾劾は単なる正義の追求では終わりませんでした。周銓は反訴し、弾劾した官僚たちを告発。時の権力者、王振は日頃から言官を憎んでいたため、周銓を弾劾した者たちを逮捕して獄に下しました。范霖と楊永は処刑されましたが、後に減刑されました。他の御史たちは辺境に流されたり左遷されたりする中、劉煒と盧祥は罪を贖って留任することになりました。この事件は、当時の官僚社会における権力闘争の激しさを物語っています。また、周銓は獄中で亡くなりました。

劉煒はその後も官僚としてのキャリアを積み重ね、都給事中にまで昇進しました。1453年（景泰4年）には、戸部が辺境の食糧不足を理由に、不正に財産を蓄えた罪に当たらない罷免者を辺境への食糧輸送に当たらせ、その報酬として米を支給するという政策を打ち出しました。これに対し、劉煒は反対しました。彼は、食糧輸送の必要性は理解しつつも、不正を犯していない官僚に負担を強いることに反対したのです。また、この年には山東が不作に見舞われ、南京戸部尚書の沈翼が振恤に派遣されましたが、効果が上がりませんでした。劉煒は沈翼を弾劾し、既に現地で対応している官僚たちを尊重すべきだと主張しました。この提言は受け入れられ、沈翼は南京戸部に帰還し、劉煒の判断の正しさが示されました。さらに、臨清に駐屯していた平江侯陳豫が制度に違反する行為を繰り返していたため、劉煒は彼を弾劾しました。これにより陳豫は譴責を受けることとなりました。これらの出来事から、劉煒が不正を徹底的に糾弾する姿勢を持っていたことがわかります。

1454年（景泰5年）、都督の黄竑が皇太子を交代させる議論を進めたことで、景泰帝の寵愛を受けました。それを利用し、黄竑は領地を要求。これに対し、劉煒は黄竑が権力を濫用していると弾劾しました。皇帝は調査を命じましたが、最終的には黄竑を処罰することはありませんでした。この一件は、皇帝の寵愛を受けた者が不正を働いても見過ごされる当時の社会情勢を浮き彫りにしています。

天順初年、劉煒は雲南参政として地方に赴任し、後に広東参政に転じました。広東では恵州府と潮州府の分守を任されました。潮州府では羅劉寧らが反乱を起こしましたが、劉煒は当初、彼らを招諭しようとしました。しかし、反乱軍が帰順しなかったため、兵を進めて鎮圧し、羅劉寧らを討ち取りました。その後、南雄府と韶州府の担当に転じました。1461年（天順5年）には、両広の瑶族の乱を鎮圧するために大軍が動員され、その過労が原因で彼は在官のまま亡くなりました。彼の死は、官僚としての責任を全うし続けた結果であったと言えるでしょう。

劉煒の生涯は、明代中期の官僚が直面した複雑な政治状況と社会問題を映し出しています。彼は不正を嫌い、正義を貫こうとしましたが、常に権力闘争や社会の不条理に直面しました。それでも、彼は職務を全うし、その生涯を終えました。彼の生き方は、後の世代に多くの教訓を与えてくれるでしょう。

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