御史

御史（ぎょし）は、中国の秦代以降に設置された官職であり、主に監察の役割を担っていました。時代や王朝によってその職務や組織は変遷しましたが、一貫して政府の不正や官僚の職務怠慢を監視し、是正する重要な役割を果たしました。

前漢における御史

前漢においては、御史は副宰相である御史大夫（ぎょしたいふ）の管轄下に置かれ、定員は45名でした。このうち15名は侍御史（じぎょし）と呼ばれ、宮中に詰めていました。侍御史は、御史中丞（ぎょしちゅうじょう）という官職に統率され、皇帝の側近として活動しました。残りの30名は御史大夫の役所に勤務し、通常の監察業務を担当しました。

御史の秩禄は六百石であり、これは彼らが担当する職務の重要性を示しています。彼らは百官の職務を監督し、不正や職務怠慢があれば、それを糾弾する役割を担っていました。

秦代における御史

秦代においては、御史は各地の郡に派遣され、監御史（かんぎょし）として地方行政を監視していました。しかし、前漢においては丞相史（じょうしょうし）が郡を監察するようになり、監御史は常置されることはありませんでした。その後、刺史（しし）という官職が置かれ、地方監察の役割を引き継ぎました。

また、監軍御史（かんぐんぎょし）という役職も存在し、軍隊を監察する役割を担っていました。これは、軍隊における不正や規律違反を防止するためのものでした。

侍御史の役割

侍御史は、公卿（こうけい）の上奏（じょうそう）を受領し、その内容を詳細に調査して弾劾（だんがい）を行いました。つまり、政府高官の不正を暴き出す役割を担っていたのです。侍御史には、繡衣直指（しゅういちょくし）という特別な職務もありました。これは、武帝（ぶてい）の時代に設けられたもので、重大な事件や討伐の際にのみ任命される臨時の役職でした。

御史制度の変遷

哀帝（あいてい）の元寿2年（紀元前1年）に、御史大夫は大司空（だいしくう）と改称され、御史大夫という官職自体が廃止されました。これにより、侍御史以外の御史の活動は確認できなくなりました。

明代になると、御史台（ぎょしだい）が廃止され、監察機関は都察院（とさついん）に改組されました。都察院には、都御史（とぎょし）、副都御史（ふくとぎょし）、監察御史（かんさつぎょし）、僉都御史（せんとぎょし）などの階級が設けられ、より組織的な監察体制が構築されました。

御史は、時代とともにその役割や組織を変えながらも、中国の官僚制度において重要な役割を果たし続けました。彼らの存在は、政府の透明性を保ち、官僚の不正を抑制する上で不可欠なものでした。

参考資料

班固『漢書』巻19上百官公卿表上
司馬彪『続漢書』（『後[[漢書]]』合刻）百官志三
* 衛宏『漢旧儀』

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