力と女の世の中

力と女の世の中

『力と女の世の中』（ちからとおんなのよのなか）は、1933年に公開された日本初のトーキーアニメ映画です。この作品は、白黒のアニメーションとして3巻、合わせて617メートルの長さを持っています。トーキーアニメという新しい試みに挑戦した本作は、昭和時代の映画技術が大きく進化していたことを象徴しています。

あらすじ

主人公はサラリーマンであり、彼には4人の子供がいます。彼の妻は180cm、120kgの堂々たる体格を持つ恐妻です。この恐妻家である主人公は、会社のタイピストと不適切な関係を持つことになりますが、夢の中でそれが妻に知られてしまいます。彼の妻は夫の不正を証明するため、彼が働く会社へ向かいます。こうした家庭内の騒動がどのように展開し、解決を迎えるのかが見どころです。

制作背景

昭和2年（1927年）にアメリカで長編トーキー映画が登場したことを受けて、日本の各映画会社はトーキー技術を導入するための研究を始めました。特に松竹蒲田撮影所の所長である城戸四郎は、トーキーの普及に強く取り組み、昭和6年には国産初のトーキー映画『マダムと女房』を制作しました。この進展により、日本映画全体がトーキー化される動きが加速し、城戸四郎は次のステップとしてアニメ映画の制作を考えるようになります。

その結果、新進気鋭のアニメ制作者である政岡憲三が選ばれ、約1年の製作期間を経て、1932年10月にこの作品が完成します。そしてその翌年、1933年4月に公開が実現し、「日本のトーキー動画映画第二弾」として位置づけられました。最初は浅草帝国館で上映され、観客からの評判も上々でした。その成功を背景に、城戸は全国各地にて上映の機会を広げました。

限界と影響

昭和9年には再び政岡と共に新作を制作しましたが、短編アニメの一本立ての公開は難しく、多くの映画館では劇映画の上映の間に挟む形でしか公開されませんでした。このため、製作の経済的な持続が困難となり、城戸の「日本のディズニー」という夢は三作で終わることになったのです。この作品やその後の流れから見ると、国内のアニメーション業界は未だ発展途上であったことが伺えます。

フィルムの現状

本作品のフィルムは現在では紛失したとされ、一部のシーンだけがスクリーンショットとして残っている状況です。アニメーションの歴史を振り返る中で、この作品が果たした役割は重要でありながら、同時にその存在が失われつつあることに残念さを感じます。

スタッフの紹介

監督は政岡憲三で、脚本と原作は池田忠雄が担当しました。制作は城戸四郎が主導しいたし、撮影を木村角山が行いました。音楽には今沢将矩、動画は瀬尾光世、原田誠一、山本三郎が手掛けました。また、録音と擬音、発声監督にはそれぞれ土橋晴夫、福田宗吉、野村浩将が名を連ねています。

声の出演は、当時は声優という職業は存在せず、俳優たちが起用されました。主人公には古川緑波、妻には澤蘭子、タイピスト役には村島洋子が起用されており、豪華なキャスティングによって話題を呼びました。

結論

『力と女の世の中』は、日本アニメの歴史において重要な位置を占める作品であり、その技術的な挑戦と内容のユニークさは後の作品に影響を与えています。日本初のトーキーアニメーションとして、時代を超えて語り継がれるべき作品です。

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