瀬尾光世

瀬尾光世：日本アニメーションの先駆者

瀬尾光世（せお みつよ、1911年9月26日 - 2010年8月24日）は、日本のアニメーション作家、絵本作家です。本名は瀬尾徳一。兵庫県姫路市出身で、日本初の長編アニメーション映画『桃太郎の海鷲』と『桃太郎 海の神兵』の監督として知られています。

アニメーション制作への道

1930年、画家を目指して上京した瀬尾は、独学でアニメーション制作を始めました。プロキノで作品を発表後、特高の追及を逃れて京都の「政岡映画美術研究所」に身を寄せ、政岡憲三に師事します。1933年には独立し、「日本マンガフィルム研究所」の専属として自身のアニメーションスタジオ「瀬尾発声漫画」を設立しました。

初期の代表作には、愛らしいキャラクターが戦地で活躍する『お猿の三吉』（1933～36年）があり、人気を博してシリーズ化されました。また、『のらくろ』シリーズ（1935～38年）では演出や作画を担当し、その才能を発揮しました。

戦時下の長編アニメーション

1937年に芸術映画社へ移籍した後、アメリカの『白雪姫』に触発され、マルチプレーン・カメラを模倣した多層式撮影台を駆使したアニメーションを制作しました。海軍省の委託で制作した『桃太郎の海鷲』（1942年）は、その代表的な作品です。

その後、松竹動画研究所に移籍し、1944年には監督・脚本・演出を手掛けた長編アニメーション『桃太郎 海の神兵』を制作しました。この作品は、当時としては異例の74分という長尺で、透過光などの特殊効果も用いられています。当時医学生だった手塚治虫は、この作品を観てアニメーション制作を志したと言われています。

戦後の苦難と絵本作家への転身

終戦後、松竹動画研究所は解散し、瀬尾は松竹を退社します。1948年に日本漫画映画社へ移籍し、『王様のしっぽ』の制作に取り掛かりますが、資金難で制作は中断を繰り返しました。1949年、完成した作品は当時の東宝社長に左翼的と問題視され、一般公開されることなくお蔵入りとなりました。この作品の制作が原因で日本漫画映画社は倒産し、瀬尾はアニメ制作から身を引くことになりました。

その後は、「瀬尾光男」や「瀬尾太郎」などのペンネームで絵本作家として活動しました。

瀬尾光世の功績

瀬尾光世は、戦前・戦中の日本アニメーション界において、その技術力と創造性で多大な貢献をしました。特に長編アニメーションの制作は、後の日本アニメーションの発展に大きな影響を与えました。

代表作品

お猿の三吉、突撃隊 (1934年) 9分
元禄恋模様 三吉とおさよ (1934年) 8分
のらくろ二等兵 (1935年) 11分
のらくろ一等兵 (1935年) 10分
いなばの国の兎さん(1935年) 7分
一寸法師ちび助物語 (1935年) 10分
テク助物語（日の丸旗之助　山賊退治） (1938年) 10分
あひる陸戦隊 (1940年) 13分
テク助物語 四十匹の狼（改編版） (1940年) 10分
アリチャン (1941年) 11分
桃太郎の海鷲（1942年）37分
桃太郎 海の神兵（1945年） 74分

参考文献

山口且訓、渡辺泰『日本アニメーション映画史』1977年、有文社
瀬尾温知:「日本初長編アニメは戦意高揚が目的〜戦時下のプロパガンダ映画の秘密 1〜」、Japan In-depth 2015/8/18 記事
瀬尾温知:「手塚治虫がアニメ製作を決意した日〜戦時下のプロパガンダ映画の秘密 2〜」、Japan In-depth 2015/8/18 記事
呉恵京：「瀬尾光世の漫画映画における表現手法」、所収：国際日本学（法政大学国際日本学研究所発行）、第8巻、頁305-350、（2010年8月10日）

外部リンク

日本アニメーション映画クラシックス・作家紹介

関連項目

政岡憲三

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