力王

力王 RIKI-OH：近未来の悪夢と、正義を貫く男の物語

鷹匠政彦の原作、猿渡哲也の作画による漫画『力王 RIKI-OH』は、1987年から1990年にかけて『ビジネスジャンプ』誌上で連載され、大きな人気を博しました。単行本は全12巻、文庫版は全9巻が刊行され、累計発行部数は250万部を記録しています。連載開始時は『ビジネスジャンプ』誌の創刊間もない時期であり、本作の成功は同誌を『週刊ヤングジャンプ』と並ぶ集英社青年コミック誌の2本柱の1つに押し上げる大きな推進力となりました。

物語は、近未来の東京を舞台に、私立国分刑務所に収監された若き囚人、雑賀力王の壮絶な闘いを描いています。力王は、右手に六芒星の痣を持つ、超人的な肉体と精神力、そして揺るぎない正義感を持ち合わせた男です。刑務所を私営化し、囚人を使い捨ての道具としか見ていない冷酷な幹部たちは、力王を抹殺しようと、四天王と呼ばれる最強の囚人たちを差し向けます。

力王は四天王を次々と打ち破り、刑務所内で密かに営まれている麻薬密造の事実を突き止めます。彼の孤高の戦いは、やがて抑圧された囚人たちを奮い立たせ、大規模な暴動へと発展していきます。最終的に、力王は刑務所の黒幕である所長と死闘を繰り広げ、勝利を収めます。しかし、それは新たな闘いの始まりに過ぎませんでした。

刑務所脱走後、力王は拳法の師である張善鬼のもとを訪れ、自身の出生の謎を解く手がかりを探します。そして、地図にも載っていない辺境地帯「岬」へと向かいます。そこは、元軍人鷲崎が支配する、まさに地獄絵図のような強制収容所でした。そこで、力王は双子の弟、那智と再会します。那智は、右手に鉤十字の痣を持つ超能力者であり、人類滅亡を企む謎の巨大組織に利用されていたのです。

力王は、弟を救い、鷲崎の野望を阻止しようと立ち上がりますが、それは兄弟間の悲痛な対決へと発展します。力王は、最愛の弟を自らの手で殺すという、想像を絶する悲劇を経験します。人類滅亡計画は阻止されたかに見えましたが、直後に発生した大地震は日本全土を壊滅状態へと陥れました。

廃墟と化した東京へ戻った力王は、養父母である雑賀夫妻を訪ね、出生の秘密を聞き出そうとします。養父は、力王と那智の実母が、第二次世界大戦下のヨーロッパから逃れてきたユダヤ人女性ハンナであることを明かし、息を引き取ります。力王は、養父が残した言葉「クリス」を手がかりに、巨大組織のアジト「不老宮」へと向かいます。

不老宮では、死んだはずの那智が生首として保存され、「クリスタル計画」と呼ばれる人類滅亡計画に利用されようとしていました。力王は、9歳の少年芥の助けを借り、無界の代理人である姉山とその手下の陰謀を次々と打ち砕きます。しかし、姉山はクリスタル計画を発動させようとしていました。その時、兄の愛によって憎悪から解放された那智は、自らを消滅させることで計画を阻止します。

父親の正体を探るため、力王は南極の「到達不能点」へと向かいます。そこには、謎の人物「無界」がいました。力王は、無界が人類滅亡後の未来から来た人物であり、ハンナを凌辱し、力王と那智を産ませた実父であることを知ります。力王は、呪われた血統を断つため自らの命を絶とうとしますが、無界は贖罪と息子への愛から自らの命を絶ちます。力王は、鯨の背に乗って無界の王国を去り、物語は幕を閉じます。

この物語は、単なる近未来アクション漫画に留まらず、戦争、民族問題、兄弟愛、そして人間の運命といった、重いテーマを内包しています。力王の壮絶な闘いを通して、読者は人間の強さと弱さ、正義と悪、そして生きることの意義について深く考えさせられるでしょう。また、OVAや実写映画も制作され、それぞれの作品で異なる魅力を発揮しています。特に実写映画は、その生々しい暴力描写で話題を呼びました。

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