加島屋 (豪商)

加島屋: 江戸時代の大坂の豪商

加島屋（かじまや）は、江戸時代の大坂に存在した著名な豪商です。特に、玉水町や大川町を拠点にし、歴史の中で非常に重要な役割を果たしました。加島屋には、久右衛門家（廣岡姓）と作兵衛家（長田姓）の二つの系統があり、特に久右衛門家はその成長に大きな影響を与えました。

久右衛門家の起源と成長

廣岡家は村上源氏に由縁を持つ赤松家を遠祖とし、戦国時代には摂津国川辺郡東難波村（現・尼崎市）に移住しました。加島屋の創業は1625年に遡り、廣岡九兵衛の次男、廣岡冨政が設立したと言われています。冨政は加島屋五兵衛に奉公し、のれん分けを受けたことからこの屋号が誕生しました。

加島屋は精米業から始まり、その後は米の売買を通じて巨万の富を築きました。特に四代当主の廣岡吉信は、堂島米市場の重要な役職を担い、その名声を確立しました。18世紀後半からは、米市場から発展して金融市場に移行し、大名への融資に特化することで財を蓄えました。

幕末から明治維新期への転換

加島屋は江戸時代の中後期になると鴻池善右衛門と共に長者番付で最高位に位置しました。また、幕府からの御用金の拠出でも目立った存在であり、幕末には新選組や萩藩への融資も行っていました。しかし、1871年の廃藩置県により大名貸の市場が消失すると、加島屋の資産は半減し、ビジネスモデルも大きな打撃を受けました。暗闇の中でその危機を乗り越えたのは、廣岡浅子の尽力によるもので、近代企業への転換を推進しました。

近代経営への進出

1888年に設立された加島銀行は、地域の金融機関として発展しました。さらに1895年には加島貯蓄銀行を設立し、関西における重要な都市銀行としての地位を築きました。加島屋はまた、生命保険事業にも進出し、真宗生命の経営権を取得、朝日生命に名前を変更しました。1902年には同志の護国生命や北海生命と合併し、大同生命が誕生しました。初代社長は廣岡正秋が就任し、本社は大阪市に置かれました。

1925年、加島屋の本宅があった地点に大同生命ビルディングが竣工し、大阪の象徴的な建物の一つとして位置付けられました。しかし、1927年の昭和金融恐慌によって経営が困難になり、加島銀行は閉業し、その資源を大同生命に集約することとなりました。

現代の再評価と発見

加島屋は長い間「忘れられた豪商」とされていましたが、2012年の創業110周年に際して、加島屋に関する約2500点の資料が大阪大学に寄託されると共に、大同生命もその歴史を紹介する特別展示を開始しました。2015年には、廣岡浅子を描いた朝の連続テレビ小説「あさが来た」が放送され、多くの注目を集めました。

さらに2022年には、加島屋本宅の再現模型が公開され、加島屋の「あきない」と「くらし」を紹介する企画展も行われました。2024年にはアーカイブ化が進んでいる資料が公開される予定です。

加島屋は多くの試練を乗り越え、現在もその歴史が注目され続けている存在となっています。

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