加納町

加納町

加納町（かのうちょう）は、かつて岐阜県稲葉郡に存在した町です。現在は岐阜市の南部にあたる地域で、古くは城下町として栄えました。江戸時代には、重要な街道である中山道における宿場町「加納宿」としての役割と、加納藩の藩庁が置かれた「城下町」としての二つの側面を持ち、地域の中心として発展しました。歴史を遡れば、この地は関ヶ原の戦い以前の「岐阜」の中心地であり、また明治維新を経て新たな「岐阜」へと繋がる上で欠かせない存在でした。その後、1940年（昭和15年）に岐阜市へ編入され、自治体としての歴史に幕を下ろしています。

歴史的経緯

加納の歴史は、近世日本の幕開けとともに始まりました。1601年（慶長6年）、徳川家康の指示により中山道が整備されると、この地に加納宿が設けられ、交通の要衝となります。同年、かつて織田信長の本拠地であった岐阜城が破却され、新たに加納城の築城が開始されました。加納城は完成後、加納藩の居城となり、加納は宿場と城下町の機能を併せ持つ、美濃国の重要な拠点として繁栄を極めます。江戸時代の加納は、加納藩の統治下で政治・経済・文化の中心地として賑わいました。

明治時代に入り、近代的な市町村制度が導入されると、1883年（明治16年）には旧加納宿の地域から東加納町と西加納町が分かれて成立しました。そして、1897年（明治30年）4月1日、これら二つの町と下加納村が合併し、改めて自治体としての「加納町」が発足します。

岐阜市への編入

加納と岐阜は、地理的には近接していながらも、それぞれ異なる歴史的背景を持つ城下町でした。1888年の市町村制度施行時も、両者は独立した自治体として存在していました。両者の合併が具体的に検討され始めたのは、大正時代、1913年（大正2年）に岐阜駅が現在の位置に移転した頃からです。しかし、協議は難航し、特に1934年（昭和9年）に岐阜県師範学校が岐阜市長良へ移転したことが合併交渉の一時的な頓挫を招きました。

その後も議論は続けられ、最終的には加納の地名を将来に残すこと、そして岐阜駅の下や東海道本線の下に歩行者用の地下道を建設することなど、いくつかの条件が付けられました。これらの条件が受け入れられた結果、1940年（昭和15年）1月23日、加納町議会で岐阜市への編入案が可決されました。そして同年2月11日、加納町は岐阜市に編入され、約80年間に及ぶ町としての歴史に区切りをつけました。

交通網

旧加納町の地域には、現在も地域の主要な交通網が通っています。JR東海道本線と高山本線が乗り入れる岐阜駅は、旧加納町の北側に位置し、交通の玄関口となっています。また、名古屋鉄道の名岐線（現在の名古屋本線の一部）も地域を通過しており、かつて町内には加納駅、広江駅、茶所駅などが存在しました。現在の名鉄加納駅は、かつて広江駅と茶所駅の間にあった安良田町駅を改称・統合したものです。

旧跡、観光、特産品

加納の地には、藩政期から伝わる歴史的な名所が数多く残されています。国の史跡に指定されている加納城跡は、かつての城下町の中心であり、その歴史を感じさせる場所です。また、中山道の加納宿として栄えた当時の面影を残すエリアや、信仰を集める加納天満宮、加納八幡神社なども点在し、歴史散策を楽しむことができます。町政時代の近代建築としては、武田五一の設計により1926年（大正15年）に建てられた旧加納町役場がありました。これは国の登録有形文化財でしたが、耐震性の問題から2016年に解体され、その跡地には中山道加納宿まちづくり交流センターが建てられ、地域の活性化に寄与しています。この地域の特産品としては、美濃和紙を用いて作られる美しい岐阜和傘が有名です。

教育機関

加納は、教育の分野でも長い歴史を持ちます。戦前には、現在の岐阜大学教育学部の前身にあたる岐阜県女子師範学校や、現在の岐阜県立加納高等学校の前身である岐阜県立加納高等女学校、岐阜県立岐阜第二中学校などが置かれていました。また、地域の子どもたちの教育を担う町立の小学校として、現在の岐阜市立加納小学校にあたる加納町立加納尋常高等小学校や、現在の岐阜市立加納西小学校にあたる加納町立加納第二尋常小学校がありました。

ゆかりのある人物

加納の地からは、近代日本において重要な役割を果たした人物も輩出されています。政治家、実業家として活躍し、教育者として甲南学園を創立した平生釟三郎や、陸軍中将、衆議院議員を歴任した仙波太郎などが、この地にゆかりのある人物として知られています。

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