労働安全衛生法による技能講習修了証明書

労働安全衛生法による技能講習修了証明書

労働安全衛生法による技能講習修了証明書は、同法に基づき実施される技能講習を修了したことを公的に証明する文書です。この証明書は、労働安全衛生法第61条第3項で定められた「資格を証する書面」に該当し、日本の多くの労働現場において、事業者が特定の危険を伴う、または有害な作業を労働者に行わせる際に、その作業者や作業主任者が必要な資格を有していることを確認するために利用されます。

制度の概要と修了証との関係

労働安全衛生法に規定される技能講習は非常に多岐にわたり、現在も多数の講習が実施されています。通常、いずれかの技能講習を修了した者には、講習を実施した都道府県労働局長登録教習機関から「技能講習修了証」が交付されます。作業に従事する際には、原則としてこの修了証の原本を携帯することが義務付けられています。

しかしながら、修了証を長期間にわたって携帯していると、摩耗や汚損が生じたり、紛失してしまう可能性もゼロではありません。また、複数の技能講習を修了している場合、それぞれの修了証を個別に持ち歩くことは、管理や携帯の面で煩雑になりがちです。

こうした状況に対応するため、労働安全衛生規則第82条第3項に基づき、「技能講習修了証明書」の制度が設けられました。これは、厚生労働大臣が指定した証明書発行機関によって発行されます。証明書の主な目的は、従来の修了証を紛失したり汚損した場合、あるいは修了証を発行した登録教習機関が閉鎖等により存在しなくなった場合の代替として機能することです。

証明書の利便性

技能講習修了証明書の大きな利点は、申請者が修了した全ての技能講習に関する情報を一枚の証明書にまとめて表示できることです。これは、複数の修了証を個別管理する手間を大幅に軽減し、携帯する際も一枚で済むという高い利便性を提供します（かつてはこの利便性から「まとまるくんカード」という通称で呼ばれたこともあります）。

この証明書は、修了証が滅失した場合だけでなく、単に複数の修了証を統合して携帯の利便性を高めたいという目的でも申請・取得が可能です。ただし、修了証明書は修了証原本に完全に取って代わるものではないため、複数の修了証をまとめて証明書を取得した場合でも、手元にある修了証原本は大切に保管しておくことが推奨されます。

証明書の記載事項

証明書には、表面に「労働安全衛生法による技能講習修了証明書」というタイトルが記され、氏名、生年月日、性別、発行日といった基本的な個人情報、顔写真が表示されます。さらに、修了した技能講習の種類とその有無が一覧で示されます。

裏面には、表面で「有り」と示された各技能講習について、実施した登録教習機関の名称、個別の修了証番号、修了年月日などの詳細情報が記載されます。ただし、裏面に記載できる講習の種類数には上限が設けられています。

発行機関について

技能講習修了証明書の発行は、厚生労働大臣が指定する機関が行います。過去には中央労働災害防止協会が唯一の指定機関でしたが、現在は国の事業仕分けを経て、技能講習修了者情報の一元管理と証明書発行事務を担う機関が、入札によって年度ごとに指定される方式へと移行しています。

まとめ

労働安全衛生法による技能講習修了証明書は、特定の作業資格を証明する公的な文書として、労働安全衛生の確保に不可欠な役割を果たしています。特に複数の技能講習を修了した労働者にとっては、修了証の管理・携帯の負担を軽減し、作業現場での資格提示を効率化できる非常に有用な制度と言えます。安全な作業環境を維持するために、この証明書の適切な取得と活用が推奨されます。

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