勅使

勅使（ちょくし）

概要

勅使とは、天皇が命じた内容を他者に伝えるために派遣される使者を指します。具体的には、神社や祭りに関与している人々への伝達を担う役割があり、特に伊勢神宮やそのほかの重要な大社に使用されることが多いです。勅使は、天皇の代理としての地位を持ち、その存在は古くから日本の皇室制度と密接に結びついています。

勅使の種類

勅使にはいくつかの種類があり、役割や派遣される目的によって異なります。たとえば、太上天皇の使者は「院使」、上皇の使者は「上皇使」、皇后の使者は「皇后宮使」といった具合に、各皇族にそれぞれ適した名称がついています。また、「例幣使」というのは、特定の時期に神社に奉幣するために派遣される勅使のことを指し、代表的なものには伊勢例幣使や日光例幣使があります。

歴史的背景

中世以降、特に鎌倉時代からは、勅使が将軍宣下や勅令の伝達業務を担うようになりました。江戸時代に入ると、勅使の接遇は外様大名が行うこととされ、勅使が天皇の命を伝えるための特別な存在であることを認識させる仕組みが整えられました。しかし、歴史の変遷と共に、このシステムは変化し、幕末の時期には尊王思想が高まり、再び勅使の権威が増していきました。

勅使殿・勅使門

勅使を接待するために設けられる施設や宿泊所には、勅使専用の部屋や門が設けられることがあります。これらは、歴史的な価値があるため、現在でも多くの場所で勅使門や勅使殿として残っています。特に、勅使門には菊花紋章が施され、特別な行事の際のみ解放されることが多いです。

現在の勅使の役割

今日でも勅使は活発に活動しており、例えば、毎年正月に行われる東寺での「後七日御修法」や、延暦寺での「御修法大法」など、多くの儀式に勅使が派遣されます。また、皇族の婚約や葬儀、国家に貢献した人の葬儀などに際しても、勅使が差遣され、伝統的な儀式が執り行われています。

終わりに

勅使は、皇室と国家の結びつきを示す重要な役割を持ち続けています。派遣される際には、時代に即した服装が求められることもあり、近年では洋装の大礼服が用いられたこともありましたが、次第に伝統的な衣冠に戻されてきています。勅使という存在は、皇室の儀式や国の行事において欠かせない存在であり、今後もその役割は変わらず重要であり続けるでしょう。

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