将軍宣下

将軍宣下

将軍宣下（しょうぐんせんげ）は、天皇が武士のトップである征夷大将軍に任命するための儀式であり、政治的権力を象徴する重要な行為とされています。この儀式により、武家政権が正式に認められ、その長が公的な権力を行使することが制度上許可されたのです。

概要

武家政権のトップは、自らの軍事力により政権を掌握し、封建制度に基づく土地管理や法律を実施しました。しかし、彼らの権力の正当性は中央政権である天皇の認識、すなわち将軍宣下によって保証されました。鎌倉時代においては、将軍宣下は原則として行われなかったと考えられています。これは、当時の将軍が鎌倉に居住し、宣下という手続きが京都に居住する者のみに適用されたためです。鎌倉の初代将軍である源頼朝は、除目という形式で正式な地位を得ていました。ただし、執権北条氏により京から迎えられた宮将軍は、この儀式を受けたことが特筆されます。

征夷大将軍の宣旨の例

将軍宣下は歴史的文書に詳細に記されています。

例えば、以下のような例があります。

• - 三品　宗尊親王の将軍宣下（『吾妻鏡』より）:

> 右、左大臣（鷹司兼平）の宣を受けて、件の親王が征夷大将軍とされることが適当である。

• - 足利義晴の例（『壬生家四巻之日記』より）:

> 勅により、件の人は征夷大将軍に任じられるべきである。

このように、将軍宣下には具体的な公文書が存在し、その内容が後世に伝わっています。これらの文書は、将軍の地位が如何にして正当化されたのかを理解するための貴重な資料です。

近世の将軍宣下

江戸時代に入ると、朝廷の権威が相対的に低下した一方で、徳川幕府は禁中並公家諸法度などを通じて支配権を強化しました。しかし、将軍宣下による権威付けは依然として重要で、徳川宗家の当主は、宣下を受けることで初めて公的に認められました。例えば、徳川将軍は「上様」と呼ばれ、将軍宣下を経て初めて「公方様」または「将軍様」として認知されるようになったのです。

将軍宣下の実施においては、江戸時代の大半にわたり、江戸城に天皇からの勅使が派遣され、将軍と勅使の間で正式な儀式が行われました。この際、幕末になると、尊王思想の影響により、勅使の位置が逆転し、勅使が上座に座るようになり、将軍が下座となることがありました。

将軍宣下はただの儀式ではなく、武士階級と天皇との間の関係を示す重要な行為であり、日本の歴史における政治構造を理解するための鍵ともいえます。

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