勅使河原直重

勅使河原直重（てしがわら なおしげ）

勅使河原直重は、生年不詳ながら、鎌倉時代末期から南北朝時代にかけて活躍した武士です。武蔵七党の一つ、丹党の流れを汲む勅使河原氏の一族であり、左衛門尉の官位を有していました。『太平記』では、勅使河原丹三郎の名で知られています。子には、貞直と光重がいたと伝えられています。

南北朝の動乱と直重の活躍

南北朝の動乱が勃発すると、直重は南朝方として新田義貞に従い、足利尊氏との戦いに身を投じました。当初、後醍醐天皇や新田義貞と対立し、九州へ一時的に勢力を落としていた足利尊氏が、次第に勢力を盛り返し、軍勢を率いて京へ進軍を開始します。この事態に対し、新田義貞は迎え撃つべく出陣しますが、大渡の戦いで南朝軍は足利軍に敗北を喫してしまいます。

『太平記』によれば、大渡の戦いで敗北した直重は、三条河原にて奮戦したと記されています。しかし、後醍醐天皇が比叡山へ脱出したことを知ると、直重は深く悲嘆し、失意のうちに羅城門近くで子と共に自害したと伝えられています。この悲劇的な最期は、南朝方の武士としての忠義と、時代の激動の中で翻弄された人々の苦悩を象徴する出来事として後世に語り継がれています。

追贈と後世の評価

直重の忠義と功績を称え、大正4年（1915年）には、従四位が追贈されました。これは、彼の死後、約600年の時を経て、その武士としての生き様が改めて評価されたことを意味します。

直重は、『太平記』に登場する人物として、その悲劇的な最期とともに、南北朝時代の動乱を象徴する一人として知られています。彼の生涯は、激動の時代を生き抜いた武士たちの姿を後世に伝える貴重な記録であり、その忠義と悲劇的な結末は、今もなお多くの人々に深い感銘を与え続けています。

参考文献

* 『太平記』（巻十四 主上都落事付勅使河原自害事）

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