動乱（獣を野に放て）

ザ・クラッシュ『動乱（獣を野に放て）』：パンクの狼煙が上がる

ザ・クラッシュのセカンドアルバム『動乱（獣を野に放て）』（Give 'Em Enough Rope）は、1978年にリリースされ、彼らの音楽キャリアにおける重要な転換点となりました。アメリカでは『白い暴動』に先駆けてリリースされたデビューアルバムとしても位置づけられています。全英アルバムチャートで2位、全米アルバムチャートで128位を記録し、評論家やファンから高い評価を受けました。

音楽的な特徴と評価

このアルバムは、「ローリング・ストーン誌」、「タイム誌」、「サウンズ」といった主要メディアで年間ベストアルバムに選出されました。「サウンズ」のデヴィッド・マクローチは、本作を「波打つ重金属」と評し、前作を凌駕する傑作として絶賛しています。ザ・クラッシュの音楽は、単なるパンクにとどまらず、多様な音楽的要素を取り入れ、社会的なメッセージを込めた歌詞が特徴です。このアルバムでは、その音楽性がより洗練され、深みを増しています。

ジャケットデザイン

アルバムのジャケットは、ジーン・グリーフによる絵はがきの一部「The Last Trail」を使用しています。初期のアメリカ盤では、バンド名とタイトルがブロック体で表記されており、後に使用された「faux-Chinese」フォントとは異なるデザインでした。このジャケットデザインも、アルバムの持つ独特な雰囲気を醸し出す要素となっています。

シングルと収録曲

「トミー・ガン」と「イングリッシュ・シヴィル・ウォー」はシングルとしてリリースされ、それぞれ全英チャートで19位と25位を記録しました。これらの楽曲は、ザ・クラッシュの代表曲として広く知られています。

B面オープニングを飾る「屋根の上の殺し屋」は、テロリズム、戦争、汚職に対する怒りを表現した楽曲ですが、実際にはスコットランドヤードの対テロリスト武装警官がバンドの拠点を急襲した事件が背景にあります。この事件は、シムノンとヒードンがリハーサルスタジオの屋上から空気銃でレース鳩を撃ったことが原因で、彼らは逮捕され罰金を科せられました。楽曲のメインリフは、ザ・フーの「I Can't Explain」から影響を受けています。

プロデューサーの意向

プロデューサーのサンディ・パールマンは、ジョー・ストラマーのボーカルをあまり好まず、ミックス時にドラムスの音量をボーカルよりも大きくしたというエピソードがあります。このミックスは、アルバムのサウンドに独特の雰囲気を与えています。

収録曲リスト

1. セイフ・ヨーロピアン・ホーム (Safe European Home)
2. イングリッシュ・シヴィル・ウォー（英国内乱） (English Civil War)
3. トミー・ガン (Tommy Gun)
4. ジュリーはドラッグ・スクワッドで働いている (Julie's in the Drug Squad)
5. ラスト・ギャング・イン・タウン (Last Gang in Town)
6. 屋根の上の殺し屋 (Guns on the Roof)
7. ドラッグ・スタビング・タイム (Drug-Stabbing Time)
8. ステイ・フリー (Stay Free)
9. ケチな野郎のスーパー・スター (Cheapskates)
10. すべての若きパンクスども (All the Young Punks (New Boots and Contracts))

メンバー

ジョー・ストラマー - ギター、ボーカル
ミック・ジョーンズ - ギター、ボーカル
ポール・シムノン - ベース
トッパー・ヒードン - ドラムス

『動乱（獣を野に放て）』は、ザ・クラッシュの音楽的な多様性と社会へのメッセージが凝縮された作品であり、パンクの歴史において重要なアルバムとして評価されています。

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