動乱 (映画)

映画『動乱』解説

映画『動乱』は、1980年に公開された東映製作の日本映画であり、高倉健と吉永小百合という日本を代表するスターの初共演が大きな話題となりました。昭和初期の日本を舞台に、軍部の内部抗争や社会情勢の混乱の中、愛を貫こうとする男女の姿を描いています。

ストーリー

物語は、昭和初期の日本、五・一五事件から二・二六事件に至る激動の時代を背景に展開されます。主人公は、青年将校の宮城啓介。彼は、軍隊内で不正を目の当たりにし、苦悩を抱えながらも職務を遂行しています。ある日、部下の脱走事件をきっかけに、溝口薫という女性と出会います。薫は、貧困のため遊郭に身を沈めていましたが、啓介は彼女を救い出し、二人は惹かれあうようになります。

しかし、二人の愛は、時代の波に翻弄されます。軍内部の権力闘争、社会不安、そして戦争の影が、二人の関係に暗い影を落としていきます。啓介は、軍の腐敗に失望し、同志と共に立ち上がることを決意します。薫は、啓介を支えながらも、彼の身を案じ、苦悩します。そして、二・二六事件が勃発。啓介は、事件に参加し、運命の歯車は音を立てて狂い始めます。

第一部：海峡を渡る愛

啓介の部下である溝口英雄が脱走したことから物語は動き出す。英雄の姉、薫が女郎屋に売られることを知った啓介は、彼女の境遇に心を痛める。英雄が事件を起こし、その後、啓介は朝鮮国境警備の任に。そこで慰労に訪れた女郎屋で薫と再会し、彼女を引き取る。

第二部：雪降り止まず

舞台は日本へ。啓介は薫を自宅に住まわせる。皇道派の青年将校たちが頻繁に訪れ、軍の腐敗を嘆く。薫は過去の清算に苦しみ、啓介との関係に悩む。青年将校たちの不満は高まり、ついには決起へと向かう。

製作の背景

企画は、のちに東映会長となる岡田裕介が担当。当初は澤地久枝の『妻たちの二・二六事件』の映画化を検討するも、存命人物が多かったため断念。山田信夫にオリジナル脚本を依頼し、高倉健と吉永小百合というスターを配することで、従来の東映カラーを破る新たな映画を目指しました。

キャスト

宮城啓介：高倉健
溝口薫：吉永小百合

スタッフ

監督：森谷司郎
脚本：山田信夫
企画：岡田裕介
音楽：三枝成彰
* 撮影：仲沢半次郎

作品の評価

『動乱』は、公開当時、その豪華なキャストと壮大なスケールで大きな話題を呼びました。高倉健の寡黙でストイックな演技と、吉永小百合の健気で美しい姿が、観客の心を捉えました。また、五・一五事件、二・二六事件といった歴史的な事件を背景に、人間の愛と苦悩を描いたストーリーは、多くの人々に感動を与えました。

一方で、戦争の美化や歴史の歪曲といった批判も存在します。しかし、本作は、その後の戦争映画に大きな影響を与え、恋愛要素を取り入れたことで女性客層の開拓に成功しました。

まとめ

映画『動乱』は、昭和史の激動の時代を背景に、男女の愛と運命を描いた作品です。高倉健と吉永小百合の熱演、森谷司郎監督の演出、山田信夫の脚本が見事に融合し、壮大なドラマが展開されます。歴史的な事件を背景に、人間の普遍的な感情を描いた本作は、今もなお多くの人々に感動を与え続けています。

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