五・一五事件

五・一五事件

五・一五事件は、1932年5月15日に日本で発生したクーデター事件です。この事件では、海軍青年将校や陸軍士官学校生徒、愛郷塾生がグループを組んで国内の主要な政治機関を襲撃し、内閣総理大臣の犬養毅を暗殺しました。本稿では、事件の背景、計画、経過、更にはその後の影響について詳しく述べます。

背景

大正時代には、衆議院第一党の党首が内閣総理大臣に就任する「憲政の常道」が確立され、議会政治が一定の安定を見せていました。しかし、1929年の世界恐慌による大不況の中で、企業倒産や急増する失業者が問題となり、社会不安が高まりました。この状況の中、政党政治に対する不満が募り、国家革新を求める声が上がりました。この運動は一部の人々によって過激化し、首相暗殺などの動きが見られました。

海軍の一部将校たちは、内閣が締結したロンドン海軍軍縮条約に不満を抱き、クーデターを計画するようになりました。井上日召という民間人も関与し、彼の影響を受けて運動は分裂しつつも継続されていきました。彼らの計画は次第に具体化し、最終的には五・一五事件へと繋がります。

計画

事件の中心となった井上日召は、古賀清志や中村義雄と密かに会い、海軍軍人の決起を取り決めました。陸軍の青年将校たちと連携し、5月15日の襲撃をもくろみました。具体的な襲撃ターゲットは、首相官邸や内閣官邸、立憲政友会本部、日本銀行などに設定されました。計画は変更を重ねつつも、最終的には参加者を四組に分け、襲撃を実行することになりました。

決行当日

1932年5月15日の当日、襲撃は午後5時30分に開始されました。第一組は首相官邸に向かい、犬養首相を探し回りました。発見した際、犬養首相は護衛や家族とともにおり、命令に従う形で襲撃が行われました。この結果、犬養首相は重傷を負い、その後死亡しました。

次に、古賀中尉率いる第二組が内大臣官邸を襲撃しました。手榴弾を投げ込み、発砲し負傷者が出るなど混乱が生じました。さらに、第三組が立憲政友会本部を襲撃し、最後の第四組は三菱銀行を狙いましたが、破壊活動は限られたものでした。

出頭・検挙とその後の影響

襲撃を終えた実行者たちは、憲兵隊本部へ自首しました。その後、事件に関与した者たちは裁判にかけられ、海軍と陸軍の公判が行われました。特に注目を集めたのは、犬養首相の暗殺を巡る一連の公判で、多くの被告たちが国民に訴えかけ、支持を得る展開となります。これにより、政党政治に対する反感が高まり、事件を起こした青年将校たちに同情的な声が広まっていきました。

事件そのものがもたらしたのは、内閣の崩壊や政党政治の終焉であり、以後の日本の政局に大きな影響を与えたと言えるでしょう。この不穏な動乱は、後の二・二六事件に繋がる土壌を形成したと考えられています。五・一五事件は、その結果として日本の政治史において重要な分岐点として位置づけられています。

結論

五・一五事件は、日本の政治体制に大きな変化をもたらし、また世論に影響を与えた歴史的な事件です。この事件を通じて、若き将校たちが持つ理想と、それが引き起こした結果の複雑さを我々は学ぶことができます。

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