動植綵絵

動植綵絵の魅力と歴史

「動植綵絵」は、近世日本の画家である伊藤若冲の代表的な作品のひとつで、江戸時代の中期、宝暦7年から明和3年にかけて制作されました。この作品は30幅から成り、動植物をテーマにした彩色絵画で、現在では国宝として重要な文化財に指定されています。作品は三の丸尚蔵館に所蔵されています。

鮮やかな彩色と幻想的な世界

「動植綵絵」は、絹本に鮮やかな色を施した作品で、鳥や鳳凰、草花、魚介類が多様な色彩と形態で描かれています。若冲の鋭い観察に基づく緻密な写生が特徴的である一方で、どこかシュルレアリスムを思わせる幻想的な雰囲気を漂わせています。この作品には、当時の最高品質の画絹や絵具が使用されており、日本で初めて用いられたベロ藍も含まれています。そのため、200年以上経過した現在でも保存状態が良好で、色褪せもほとんど見られません。

若冲の寄進と仏教的思想

若冲は、作品を相国寺に寄進し、両親や弟、そして自らの永代供養を願っていました。『動植綵絵』という名称は、若冲が寄進状に記したことに由来しています。彼の作品には「山川草木悉皆仏性」の思想が盛り込まれており、観音経にある「三十三応身」に形象化されているとされています。これらの作品は、毎年6月17日に相国寺で行われる「観音懺法会」の際に一般公開され、参道ではお祭りのように賑わったと伝えられています。

皇室への献納と展示の歴史

明治22年には、『釈迦三尊図』と共に若冲の寄進状に基づき、皇室に献納されました。その際、下賜金1万円が相国寺の維持に貢献しました。『動植綵絵』は重要な賓客を迎える際の装飾として使われ、また明治37年のセントルイス万国博覧会では、若冲の作品が織物として再現され、金賞を受賞するなど国際的な評価も得ました。

現在の公開と保存状況

今日では宮内庁が「動植綵絵」を管理しており、2007年には相国寺で120年ぶりの全幅同時公開が実現しました。2016年には若冲生誕300周年を記念して、東京での初めての全幅同時公開も行われました。ゆえに、若冲の作品は常に人々の注目の的であり、その魅力や価値が新たに再認識されています。

作品の分類

「動植綵絵」は、その制作時期を辻惟雄の3期説に基づいて区分され、各幅には副題が付けられています。第1期には、たとえば「芍薬群蝶図」や「梅花小禽図」などが含まれ、第2期には「南天雄鶏図」や「梅花群鶴図」があり、最終的な第3期には「諸魚図」や「老松白鳳図」が配置され、そのそれぞれが独自の美しさを持っています。

「動植綵絵」は、伊藤若冲の芸術的才能を余すことなく示した作品であり、見る者に感動を与え続けているのです。

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