動物運動論

動物運動論についての解説

古代ギリシャの哲学者アリストテレスの著作『動物運動論』（希: Περὶ ζώων κινήσεως、羅: De Motu Animalium、英: Movement of Animals）は、彼の動物学に関する研究書の一つであり、動物の運動機能をその原因や目的と共に探求する内容が特徴です。本書はアリストテレスの5冊の動物学著作の中で、『動物誌』、『動物部分論』に次ぐ第3の書として位置づけられていますが、その真作性には未だに議論が存在します。

構成について

本書は全11章で構成され、それぞれが動物の運動に関する異なるテーマを扱っています。以下は各章の概要です。

第1章 - 動物の運動の原因・起源

この章では、動物運動の根本的な原因として「不動点」や「静止点」に焦点を当て、関節の役割について論じています。

第2章 - 体内の「静止点」と外界の「支点」

ここでは、船の例を用いて、動物の運動における体内の静止点としての関節と、外界の支点（地、空気、水）との関係について解説します。

第3章 - 「第一動者」の性質

この章では、アトラスの神話を引用しながら、第一動者としての性質に迫ります。

第4章 - 宇宙の「第一動者」

宇宙外に存在する第一動者について考え、地上の無生物の運動が生物体に由来することを探求します。

第5章 - 従属的な運動としての構造変化

生成と消滅という視点から、構造変化としての運動を考察します。

第6章 - 運動の目的

運動の最終的な目的や、霊魂が身体を動かすメカニズムについて論じ、宇宙と生物体との比較を行います。

第7章 - 思弁と行動

思弁に基づく理論ではなく、行為の推論に基づいた結論としての行動について考えます。自動機械との比較も行き、動物運動の本質に迫ります。

第8章 - 微小な身体的変化

微細な変化が意識に上がらないこと、心身の機構や連鎖的な運動が示す中心的な要素について考察します。

第9章 - 運動の起動因としての心臓

心臓を運動の起動因と位置づけるとともに、身体の左右相称性や同時運動性について語り、霊魂気管としての心臓の重要性を探ります。

第10章 - 運動の形相因と質料因

運動に必要な身体的変化としての「内在的気息」を扱い、動物の身体を秩序ある共和国として理解する視点を示します。

第11章 - 無意識的運動や不随意的運動

身体構造の理論的根拠を基に、無意識的な運動や不随意的運動について論じ、非合理的な動きが身体の状態に由来することを考えます。

日本語訳

『動物運動論』は、いくつかの翻訳版が存在しており、特に有名なものには、島崎三郎訳（1969年、岩波書店）、濱岡剛・永井龍男訳（2016年、岩波書店）、坂下浩司訳（2015年、京都大学学術出版会）が挙げられます。これらの翻訳により、アリストテレスの重要な考え方が現代の読者にも伝わっています。

関連項目

アリストテレスの思想は、動物学、生物学、生理学など、多くの学問分野に多大な影響を与えています。

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