動線

動線とは

動線（どうせん）とは、人々が通路を歩く際に自然に選ぶ経路を示す概念です。特に建物の設計や間取りを考える際には、この動線を意識することが重要です。利用者の行動パターンを予測し、事故を減らし、移動距離を短くするための平面計画が求められます。動線を考慮した設計を「動線計画」と呼び、効率的で快適な空間を作り上げるための基盤となります。

動線と導線の違い

建物内や店舗、市街地などで使用される「導線」という言葉は、一般には人を導く経路を指しますが、元々は電気伝導体を意味するものであり、動線の方が正確な表現です。動線計画を行う際は、動線の重要性を理解し、その特性を具体的な設計に反映させることが大切です。

動線計画の重要性

動線計画は、設計の目的や用途によってさまざまな要素が重視されます。以下では、動線計画で考慮すべき主な要素を紹介します。

1. 交差

異なる動線が交わる交差点は、特に病院などの施設での利用者にとって重要です。動線が交わることを最小限に抑えることは、利便性の向上に直結します。これにより、事故や院内感染を防ぎ、プライバシーが守られるなどの利点があります。また、百貨店においては、スタッフや商品の移動が多く、無秩序になると顧客のストレスにつながるため、動線の交差を避ける必要があります。逆に、学校や住宅などでは、利用者同士の対面を促進するために、意図的に交差を設けることもあります。

2. 長さ

利用者の移動距離も動線計画において重要な要因です。たとえば、病院の場合、看護スタッフの動線を短く設計することで、効率的なケアが可能になります。頻繁に移動が予測される大型機器を扱う部門では、曲がり角を減らしてスムーズな交通を実現する工夫も必要です。商業施設では、客が多くの商品を目にするために、動線を意図的に長く取ることもあります。

3. 誘導

スーパーマーケットでは、客に特定の経路を辿らせることで、効率的な買い物を促進します。たとえば、入り口からレジまでの動線を設定し、最初に軽い商品を配置し、最後に重い商品を持たせることで、購買する気を引き出す手法が一般的です。このように、適切な誘導が購買経験を向上させます。

4. 明快さ

多くの人々が利用する場合、初めての訪問者でも迷わず目的を果たすことができるよう、動線の明快さが求められます。このための事前のサイン計画や構造的な配慮が必要です。実際に、設計家原広司が手がけた札幌ドームの動線設計は、その明快さで評価されています。

まとめ

動線は、建物の設計や施設計画において重要な概念です。利用者の行動パターンを理解し、動線計画を行うことで、より快適で事故の少ない空間を実現することができます。さまざまな要素を考慮しながら、最適な動線を設計することは、建築家やデザイナーの重要な使命と言えるでしょう。

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