勘事

勘事（かんじ / こうじ）とは

勘事は、官人が上官による罰を受ける際に、出仕を禁止されることを指します。この処分は一般に「勘当」とも称されますが、特に天皇からの勘事の場合は「勅勘」と呼ばれ、その重要性が強調されます。

勘事の語源と歴史的意義

「勘事」という言葉の根本的な意味は、罪を「勘える」すなわち判断することに由来しています。かつては罪を犯したと見なされた官人に対して、その処分を決定する行為を指していましたが、次第にこの処分そのものや、それを受けた個人を指すように変化しました。このように、勘事は日本の歴史の中で官人の行動や責任に対する重要な制度として位置付けられています。

文献における勘事の表現

古典文学の中では、勘事の概念が登場する例が見受けられます。たとえば、紫式部の『源氏物語』の須磨の章では、弘徽殿大后が光源氏の須磨退去を「おほやけのかうじ」と表現しています。これは、当時の社会において勘事がどれほど重大な問題であったかを示しています。

中世における勘事の実例

中世に入ると、主君からの勘事によって出仕を拒否される事例がいくつか見受けられました。特に天皇（上皇や法皇を含む）からの指示は重い処分として扱われ、「勅勘」は特に厳しい罰とされました。これは院政の時代以降に顕著であり、単なる出仕停止にとどまらず、閉門や籠居といった更なる厳罰が科されることもありました。

例えば、保安元年11月13日（1120年12月5日）の出来事では、関白藤原忠実が白河法皇による勅勘を受け、閉門と内覧職権の剥奪をされました。このことは実質的に彼の関白としての地位が失われたことを意味します。事件の結果、藤原忠実はその後、自身の嫡男である藤原忠通に新たな関白としての役割を譲ることになりました。

現代における勘事の理解

勘事という制度は、今では簡単に理解されるものではありませんが、歴史における政治的な力関係や権威の在り方を示す重要な概念と言えるでしょう。上官からの勘事が果たした役割は、当時の権力構造を理解する上での鍵となるものであり、今日においてもその影響は残ると言えます。勘事は、単なる罰の一形態ではなく、権力者と被処罰者との関係を再考する上での重要な要素なのです。これからも勘事の理解は、歴史的な背景や社会構造の一部として大切にされるべきでしょう。

参考文献

• - 石井良助「勘当」（『国史大辞典 3』（吉川弘文館、1983年））
• - 池田尚隆「勘事」（『平安時代史事典』（角川書店、1994年））
• - 中村修也「勘当」（『平安時代史事典』（角川書店、1994年））
• - 野村忠夫「勅勘」（『平安時代史事典』（角川書店、1994年））

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