勝利への脱出

第二次世界大戦中、ドイツの捕虜収容所に収容されていた連合軍兵士たち。彼らは、限られた自由時間の中でサッカーに興じていました。その光景を目にしたドイツ軍情報将校フォン・シュタイナーは、連合軍捕虜チームとドイツ代表チームによる親善試合を企画します。

当初は単なる親善試合と思われていましたが、連合軍捕虜チームのリーダー格であるコルビー大尉とその仲間たちは、この試合を大規模な脱走計画の隠れ蓑として利用しようと企てます。彼らは、試合を成功させることで、脱走を成功させるための時間と機会を得ようとしていました。

この計画には、様々な困難が待ち受けていました。まず、メンバーの人選です。サッカーの腕前だけでなく、脱走計画にも協力してくれる人物を選抜する必要がありました。また、外部との連絡手段の確保も重要な課題でした。米軍捕虜のハッチは、外部のレジスタンス組織との連絡役を担うため、危険を冒して収容所を脱出します。

計画は着々と進められ、試合はフランスのパリで行われることになります。5万人の観客が集まる大舞台で、連合軍捕虜チームはドイツ代表チームと対戦します。しかし、試合は連合軍チームにとって苦戦を強いられる展開となります。審判の偏った判定や主力選手の負傷など、様々な逆境に見舞われます。

試合は前半、1対4でドイツ代表チームがリードします。ハーフタイム中、下水道を使った脱走の準備が整いますが、コルビー大尉をはじめとする多くの選手は、サッカー選手としての誇りを優先し、脱走を拒否します。脱走に固執するハッチを、コルビー大尉とルイスは説得し、後半戦に挑むことを決意させます。

後半戦、連合軍チームは反撃を開始します。中心選手たちの活躍により、同点に追いつきます。試合終盤、ドイツ代表チームにペナルティキックが与えられますが、連合軍チームのゴールキーパー、ハッチの活躍でこれを阻止。観客席からは、フランス国歌であるラ・マルセイエーズが歌われ始め、会場全体が興奮の渦に包まれます。

この混乱に乗じて、連合軍捕虜チームは観客に紛れて脱走を成功させます。この映画は、第二次世界大戦下の悲劇と、スポーツマンシップ、そして自由への希望を描いた感動的な物語です。

この映画のモデルとなったのは、1942年8月にウクライナで行われた、ディナモ・キエフを中心としたサッカーチームとドイツ軍との試合です。この試合は「死の試合」と呼ばれ、勝利したディナモ・キエフの選手たちは、その後、ドイツ軍によって強制収容所に送られ、多くが処刑されました。映画『勝利への脱出』は、この歴史的事実を基に制作されていますが、結末は史実とは異なっています。

映画には、ペレやボビー・ムーアなど、サッカー界のレジェンドたちが多数出演しています。彼らの存在は、映画にリアリティと迫力を与えています。また、シルベスター・スタローンとマイケル・ケインというハリウッドスターの共演も話題を呼びました。スタローンはアメリカンフットボール経験者という設定でゴールキーパー、ケインはイングランド代表選手という設定でセンターバックを務めました。当初、スタローンが決勝ゴールを決める予定でしたが、ゴールキーパーというポジション柄、現実的ではないとして変更されました。

撮影はハンガリーで行われました。1938年FIFAワールドカップ決勝会場であるスタッド・オランピック・ドゥ・コロンブを模したスタジアムが使用されましたが、時代背景を考慮し、近代的な設備の整っていないスタジアムが選ばれました。この映画は、戦争とスポーツ、そして自由と希望を描いた、忘れられない作品として、多くの人々の心に刻まれています。

もう一度検索