勝手にふるえてろ

勝手にふるえてろ

『勝手にふるえてろ』は、綿矢りさが手がけた日本の恋愛小説で、2010年に発表された作品です。この作品は、第27回織田作之助賞にノミネートされており、文学界で高く評価されています。発表当初は『文學界』に掲載された後、加筆修正を経て本として刊行されました。実に3年ぶりの長編作品となります。

あらすじ

物語は、恋愛経験ゼロの26歳のOL、江藤良香（ヨシカ）が主人公です。彼女は都内の経理課で働いており、日々、現実の恋人と長年の片想い相手との間で揺れ動く心情を抱えています。ヨシカは、学生時代からの同級生である一宮（イチ）に特別な憧れを抱きつつ、同僚の霧島（二）からの告白を受け、その中で自らの感情を整理しようともがく姿が描かれます。

イチとの「脳内恋愛」を楽しむヨシカは、一見独特な趣味や行動を持つオタク系女子です。彼女の日常は、絶滅した動物についての研究や、博物館の化石の収集に没頭することが中心で、普段は心の中での想像の世界に生きています。しかし、自宅での小火事件を機に人との関わりを見直し、実際にイチと会う決意をします。そうして彼女は同窓会の実施を計画し、自身の想いを現実に変えるための一歩を踏み出します。

同窓会では、懐かしい顔ぶれとの再会が待っていますが、良香は自分の影響力が薄いと感じつつも新年会を提案します。この新年会の場で、彼女はついにイチとの共通の関心が交流を生むきっかけとなり、次第に心の距離が近づいていきます。しかし、身近な人々との関係や自らの恋心に悩むヨシカは、過去の想い出や中学時代の自分と向き合いながら、どのように結末を迎えるのかは物語の見どころです。

映画化とその成功

この作品は2017年に映画化され、松岡茉優が主演を務めました。映画は第30回東京国際映画祭のコンペティション部門で観客賞を受賞し、話題となりました。主演の松岡はその演技で高い評価を受け、各映画祭での入賞歴もあり、その人気がうかがえます。

映画では、日常の描写とともに、ヨシカの心の揺れ動きを視覚的に表現されています。特に、映像における演技力、ストーリー構成が功を奏し、一般観客からも好評を得る結果となりました。また、映画の公開後、興行的にも大成功を収め、新宿の「新宿シネマカリテ」での興行収入が記録的な数値を上げるなど、その人気は続きました。

まとめ

『勝手にふるえてろ』は、恋愛のもどかしさや楽しい瞬間を描いた心温まる作品であり、多くの読者に親しまれています。アイデンティティの探求や人とのつながりを描く中で、現代女性の複雑な心理を映し出したこの小説は、文学としても映画としても高い評価を受ける作品です。読者は、主人公ヨシカの心の内を共感しながら、彼女の成長を見守ることができます。

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