概要
勧進相撲(かんじんすもう)は、日本の
相撲の一形態であり、現在の
大相撲の起源を形成しています。その発展は戦国時代にさかのぼり、貴族たちが
京都から移り住んだことで、そこでの文化が全国に広まりました。この過程で、土地
相撲として知られる伝統的な形式が広がり、
相撲を生業にする
力士が
巡業を行うようになりました。
神社や仏閣の改築や修復の資金を集めるために行われる
興行も「
勧進」と呼ばれ、祭りにおいて
相撲が行われることが一般的であったため、営利目的であったにもかかわらず「
勧進相撲」としての名前が定着しました。これに関連して、秋田、南部、津軽、仙台、
江戸、尾張、紀伊、京、大坂、讃岐、播磨、因幡、長崎、肥後、薩摩など、様々な地域に
相撲集団が存在しましたが、中でも
江戸、
京都、大坂の
相撲が盛況でした。
その起源は不明確ですが、
文禄・
慶長の頃(
1600年頃)から上方では
巡業が行われていました。しかし、
慶安年間には
浪人や
侠客が関与し、
相撲競技中に喧嘩が絶えない状況となり、各地で
勧進相撲は禁じられました。
江戸幕府は、
1648年に「風紀を乱す」として
勧進相撲禁止令を出したのです。その後、次第に解禁されるようになり、特に
京都相撲は「
勧進」名目で行われていました。
江戸相撲は街中での
興行が戒められ、寺社の境内で
興行を行うようになりました。
1742年、
江戸において
勧進興行が全面的に解禁され、年間を通じて
江戸、
京都、大坂での「四季
勧進相撲」が実施される体制が整いました。「
勧進相撲」という名前は残りましたが、その背景には寺社奉行の管轄下にあったことが影響しています。
その後、
勧進相撲の集団は
江戸と大坂に集約され、
1925年には東京
相撲が大阪
相撲と合併し、
勧進相撲の組織が
日本相撲協会に統合され、現代の
大相撲が誕生しました。形式的ではありますが、「
勧進元」という呼称は
1944年まで残り、現在でも地方
巡業の主催者を指す用語として使用されています。
近年には、
1962年に
大阪府の
四天王寺再建を目的とした「
四天王寺復興
勧進大相撲」が実施されました。また、
2024年には令和6年能登半島地震を受け、復興資金を集めるために
両国国技館で「能登半島地震復興支援
勧進相撲」が62年ぶりに開催されることとなりました。このイベントでは、現役の
力士と引退した
力士との対戦、初っ切り、さらには
力士による歌謡ショーも行われました。
勧進相撲の制度は、現代の
大相撲に多くの影響を与えており、特に
江戸相撲の制度はその後の形態に顕著に反映されています。しかし、初期には現在の
大相撲には見られない慣習が存在しました。たとえば、実力のない
力士を看板
大関に任命することや、大名による抱え制度の導入、また外部の圧力による勝敗や
番付への影響も見受けられました。
勧進元と
力士の関係も安定が欠けており、
力士の福祉は常に不安定でした。
明治時代初期には、待遇改善を求めて高砂浦五郎が声を上げ、その影響で
昭和初期まで労働争議や
相撲集団の分派が続きました。
これらの歴史的背景を持つ
勧進相撲は、現代の
大相撲文化の根本を成す位置づけにあたります。