化学消防車

化学消防車

化学消防車は、水による消火が困難な特殊な火災に対応するために開発された消防車両です。主に石油コンビナートや航空機事故などの危険物火災現場で活躍します。化学車とも呼ばれています。

概要

油火災や化学物質火災では、水をかけると火勢が拡大する危険性があります。そのため、これらの火災には泡消火剤や粉末消火剤を使用します。化学消防車は、これらの消火剤を効率的に放射するための設備を備えています。

化学消防車は、消防署だけでなく、石油備蓄基地や空港など、大規模な火災が発生する可能性の高い施設にも配備されています。また、化学工業関連企業や石油コンビナートなど、自衛防災組織の設置が義務付けられている民間施設にも配備されています。

幹線道路や高速道路を抱える消防署にも配備されることが多く、車両火災への備えとしても重要な役割を担っています。その他、消防団や自衛隊の基地などにも配備されています。

泡消火剤は、原液を水と混合して放射することで消火効果を発揮します。そのため、化学消防車には通常、水と原液を貯蔵するためのタンクが搭載されています。しかし、タンク内の消火剤は数分から20分程度で消費されてしまうため、泡原液搬送車による補給が不可欠です。大型化学車、泡原液搬送車、高所放水車の3台をまとめて「化学車3点セット」と呼ぶことがあります。近年では、大型化学車と高所放水車の機能を一体化した大型化学高所放水車が登場し、泡原液搬送車との2点セット運用も可能になっています。

化学車3点セット

大型化学車：泡消火剤を大量に放射し、火災を鎮圧します。
泡原液搬送車：大型化学車に泡消火剤原液を補給します。
高所放水車：高所から泡消火剤を放射し、効果的な消火活動を支援します。

化学車の型式

化学消防車は、搭載する設備や性能によって様々な型式に分類されます。

軽化学車：比較的小規模な火災に対応する化学車です。
I型化学車：1,000Lの水槽と300Lの薬液槽を装備しています。
II型化学車：1,300L以上の水槽と500Lの薬液槽を装備しており、最も一般的な化学車です。
重化学車：大規模な火災に対応できる化学車です。
III型化学車：1,300L以上の水槽と1,200L以上の薬液槽を装備しています。
IV型化学車：2,000L以上の水槽と1,600L以上の薬液槽を装備しています。
V型化学車：2,300Lの水槽と1,800Lの薬液槽を装備しており、特に大規模な化学火災に対応できます。
大型化学車：石油コンビナートなどの大規模火災に対応するために、大I型と大II型があります。水槽は装備されておらず、他の消防車からの送水を前提としています。
特殊化学車：毒劇物災害に対応するための特殊な化学車です。
空港用化学消防車：航空機火災に対応するための化学車で、超大型と特殊化学消防車があります。

泡消火薬剤

泡消火薬剤は、火災の種類に応じてクラスAとクラスCに大別されます。

クラスA：普通火災（ガソリン等の危険物火災以外の一般火災）に使用されます。
クラスC：化学車の薬剤槽に積載される薬剤で、主に以下の種類があります。
たん白泡消火薬剤：石油貯蔵タンクなどの大規模な油火災に使用されます。
合成界面活性剤泡消火薬剤：一般火災にも使用でき、軽化学車に搭載されることが多いです。
水性膜泡消火薬剤：航空機火災に適しており、空港用化学消防車に搭載されています。

化学消防車は、危険物火災や特殊な火災に対応するために不可欠な消防車両です。その種類や装備、使用する消火薬剤について理解することで、より効果的な防災対策に繋がります。

もう一度検索