北の宿から

「北の宿から」：都はるみの名曲の魅力

「北の宿から」は、1975年12月1日にリリースされた都はるみの67枚目のシングルであり、演歌と昭和歌謡の中でも特に評価の高い楽曲です。この曲は、発売からの数ヶ月で140万枚を超える売上を記録し、都はるみにとっては「アンコ椿は恋の花」や「涙の連絡船」に続き、3曲目のミリオンセラーシングルとなりました。1990年には145万枚という数字が報告されています。

この曲は、1975年に放送された『第26回NHK紅白歌合戦』で初めて披露され、翌年の第27回でも歌われました。特に1976年には、彼女が紅組のトリを務めるなど、その年の音楽賞を多数受賞した背景がありました。「北の宿から」は、第7回日本歌謡大賞及び第18回日本レコード大賞の両方で大賞を受賞した初の楽曲でもあり、記録的な快挙とされています。

歌詞の背景

歌詞は阿久悠によって作詞され、当初は都はるみの元気さを生かした「野郎」というタイトルの詞が制作されましたが、最終的にボツになり「北の宿から」という形に変更されました。歌詞の中では、別れた男性のセーターを編む女性の姿が描かれており、これは恋愛の終焉を自ら整理するための儀式とされています。歌の中の「死んでもいいですか」は一見自嘲的であり、女性の感情をより深く描写しています。

この楽曲は淡谷のり子により「演歌撲滅運動」の中で名指しで批判されるなど、当時の社会において議論を呼びました。しかし、阿久悠はこの曲で強い女性の姿を描こうとした意図があったものの、実際には「怖い女」とか「悲しい女」として捉えられることが多かったと振り返っています。

旋律とその影響

この楽曲の旋律は、フレデリック・ショパンのピアノ協奏曲第1番の冒頭部分と類似する点が指摘されていますが、作曲者である小林亜星は明確にその影響を否定しています。ショパンは1849年に亡くなっているため、著作権もすでに消滅している状況でしたが、後に小林はこの曲のヴァイオリン編曲版も発表しています。

チャート情報

「北の宿から」は1976年のオリコンシングルチャートで年間第3位、翌1977年には第11位を記録しました。その後、1976年12月には、ついに週間1位を獲得し、この場合の最長到達週間記録は2003年まで存在しました。オリコンシングルチャート100曲目の1位作品でもあり、特に「第26回NHK紅白歌合戦」でのパフォーマンスが曲の人気を加速させました。

カバーと影響

「北の宿から」は、他のアーティストによっても多くカバーされています。1977年に石川さゆり、1978年にはテレサ・テン、青江三奈と続き、1996年には天童よしみなどがそれぞれ異なる解釈でこの楽曲を歌っています。近年では、2020年のUAのトリビュートアルバムでもこの曲が収録され、その魅力は世代を超えて引き継がれています。

エピソード

発売当初のレコードの価格は500円でした。興味深いことに、1978年には北朝鮮の拉致被害にあった地村富貴恵が、この曲を口ずさむことで辛い境遇を慰めていたと言われています。

「北の宿から」は、時代を超えて多くの人々に愛される楽曲であり、その深い歌詞や感情が、多くのリスナーの心に残り続けています。

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